SAPのアドオン/周辺システム開発の最新トレンド(vol.49)

2021.10.26

昨今、SAP S/4HANAなどの基幹業務システムの導入において、「Fit to Standard」と呼ばれるERPパッケージの標準機能に業務を合わせてシステム導入する手法が、多くの企業で検討されています。
しかし、標準機能だけでは業務要件を満たすことはできないため、最低限のアドオン開発や関連する周辺システムの開発が必要となります。
このアドオン/周辺システム開発の生産性向上や運用負荷を低減させるために有用な手段として、ローコード開発が注目されています。

本ブログでは、SAP S/4HANAなどの基幹業務システムのアドオン/周辺システム開発において有用なローコード開発プラットフォームについて解説します。

SAPのアドオン/周辺システム開発の課題

日本企業は日本独自の商習慣や自社独自の業務プロセスを損なわないよう、SAP ERPなどの基幹業務システム導入においては「業務に合わせたシステム」を構築することが重要視され、もともとのERPパッケージの原型をとどめないほどのアドオン開発やカスタマイズが行われてきました。

この「業務に合わせたシステム」は日本の過剰ともいえるきめ細かいサービスを支えてきたことは間違いないのですが、システム開発が膨らみ、運用が煩雑になるなどのデメリットも内在していました。加えて、システムが複雑化することでパフォーマンスが悪化する、開発期間の長期化により業務の変化に追いつかない、作り上げたシステムが業務とフィットしておらず結果的に使い勝手の悪いシステムになるといった影響も少なからずあったかと思います。

昨今、SAP S/4HANAを代表するERPシステムの導入においては、「Fit to Standard」と呼ばれている、ERPパッケージの標準機能に業務を合わせてシステム導入する手法が推奨されています。
通常、ERPシステムは、様々なお客様で標準的に利用される管理項目・業務処理をブロック化(組織・データ・機能など)し、ベストプラクティスとして保有しています。
一般的に、諸外国では、このベストプラクティスを活用したERPシステムの標準導入を前提に、“システムに業務を合わせる”ことが多いと思われます。
一方、日本では逆に、“業務にシステムを合わせる”ことが主流で、アドオンやカスタマイズが膨大になるケースが大半です。
これがDXレポートやDXレポート2で指摘されている、レガシーシステムと化してしまう一つの原因と考えます。

DXレポートではDXの推進を阻む課題として、「レガシーシステムの課題」 「IT人材不足の課題」 「ユーザとベンダーの関係性の課題」の3つが挙げられています。
これらの課題をすべて解決できるわけではありませんが、企業がDXを推進する中で、有効な手段のひとつとして脚光を浴びているキーワードがローコード開発です。

SAPのアドオン/周辺システム開発に有用な“ローコード開発”とは?

ローコード開発とは、アプリケーション開発を行う際のコード記述量を大幅に削減することで、開発生産性を高めるための開発手法です。
C言語やJavaなどのプログラミング言語を使ったこれまでのアプリケーション開発は、開発者に相当量の専門知識や経験が必要でした。
それに対して、ローコード開発では、少ないコードで開発ができるため、高度なプログラミングスキルを持っていない利用者や開発者でも開発を行うことができます。

ローコード開発の大きな特徴は、「直感的な操作」でアプリケーション開発ができることです。
開発ツール上に画面デザインや業務ロジック、データ構造といった設計情報を「入力」するだけで、ツールがアプリケーションを自動生成します。
「入力」といっても多くはGUIのソフト部品をマウスのドラック&ドロップで操作し、設定情報を打ち込む程度。開発者は、追加拡張が必要な部分だけコーディング作業をするだけです。
プログラミングの作業がほぼ発生しないため、人的エラーが混入しにくく、手戻りの低減が期待でき、開発工程の大幅な短縮につながります。

このローコード開発を可能とするアプリケーションが、ローコード開発プラットフォーム(Low Code Development Platform:以下LCDPという)です。
LCDPは、従来のアプリケーションプラットフォームと比べると、ベンダー間での移植性は低下するものの、開発生産性を大幅に向上できます。

ローコード開発プラットフォームを活用したSAPの導入手法とは?

昨今のトレンドとして、ERPシステムであるSAP S/4HANAはベストプラクティスを活用したFit to Standardで導入し、アドオン/周辺システム開発はLCDPを活用するケースが増えてきています。

これまでSAP ERPのアドオン開発は、SAP ERPの開発でのみ使われる独自のプログラミング言語:Advanced Business Application Programming(以下、ABAP:アバップ)での開発が前提となっていました。ABAPでのアドオン開発には、当然ですがABAPを使える開発要員の確保が必要であり、この限られたエンジニアのリソース不足により、SAPベンダー・ロックインなどの問題が発生しています。
しかし、これからは、このABAPを使用せずともアドオン/周辺システム開発を可能とするLCDPを活用することで、開発リソースを確保するだけでなく、開発生産性や運用効率を高め、開発/運用コストを抑えることが可能となります。

これにより、25業種分/数万を超える業務ブロックを標準機能として保有しているSAP S/4HANAのベストプラクティスをベースに、自社の業務に不足している部分のアドオン/周辺システム開発にはLCDPを活用するという「良いとこどり」のシステム導入を進めることができます。
これは、今後のSAP S/4HANAを導入する際の主流になるだろうと考えています。

SAPのアドオン/周辺システム開発が可能なローコード開発プラットフォーム4選

本項では、SAP S/4HANAのアドオン/周辺システム開発が可能なLCDPについて、代表的な4製品をご紹介します。

  1. OutSystems(アウトシステムズ)
    開発元のOutSystems社は、2001年にポルトガルで創業し、現在は本社をポルトガルとアメリカに置くソフトウェアベンダーです。2017年には日本法人を設立しています。
    同社の提供するOutSystems は、2021年現在、87カ国、22業種で数千社の採用実績がある世界でも有数のLCDP製品です。
    最大の特徴は、ドラッグ&ドロップで簡単に開発できるLCDPのメリットは持ちながらも、大規模システムにも適用できる開発者向けの統合型LCDP製品であることです。アプリケーションの要件定義、設計、テスト、実装、運用までソフトウェアの全ライフサイクルをカバーします。
    環境はクラウドとオンプレミスに対応し、開発するアプリはWebアプリとモバイルアプリの両方をカバーしています。

    ・参考URL:https://itsol.isid.co.jp/outsystems/

  2. Salesforce Platform(セールスフォース プラットフォーム)
    クラウド型CRM/SFAサービスのSalesforceで知られるセールスフォース・ドットコム社が提供するLCDP製品です。
    Salesforceのサービスは、すべてこのSalesforce Platform上で構築されています。Salesforceが提供する豊富な機能を自由に利用することができるため、すでにSales CloudやService Cloudを導入している企業が活用することで、開発業務の効率化がさらに加速されます。
    ただし、利用環境はクラウドのみとなっています。

    ・参考URL:https://www.salesforce.com/jp/products/salesforce-platform/

  3. Mendix(メンディックス)
    Mendixは、ドイツの情報通信機器メーカーのSiemens(シーメンス)が、2018年に買収したMendix社が開発したLCDP製品です。世界中で1,000社以上の導入実績を持ち、10万以上のアプリケーションがMendixプラットフォーム上で稼働しています。
    特にシーメンスPLM製品との親和性が高く、製造業が求める複雑な機能要求にも対応し、安全性や拡張性を確保しています。モデル駆動型の開発手法を採用し、作成したモデルを画面レイアウトにドラッグ&ドロップするだけで開発ができます。
    こちらも市民開発者向けというより、プロの開発エンジニア向けとなっていますが、開発画面はノーコードで開発できるビジネスユーザー向けの「Mendix Studio」と、プロ開発者向けの「Studio Pro」の2つを用意し、両方の開発環境(IDE)は相互に同期します。
    環境はクラウドとオンプレミスに対応し、開発するアプリはWebアプリとモバイルアプリの両方をカバーしています。

    ・参考URL:https://www.mendix.com/

  4. Microsoft Power Platform(マイクロソフト パワー プラットフォーム)
    Microsoft Power Platformは、Microsoftが提供するLCDP製品です。
    Power Platformの中には、Microsoft Power Apps(アプリ作成)、Microsoft Power Automate(プロセス自動化)、Microsoft Power BI(ビジネス分析)、Microsoft Power Virtual Agents(チャットボット)の4つがありますが、LCDPの対象として比較対象としたのはPower AppsとPower Automateの2つです。
    Microsoftのクラウド基盤上でPaaSとして提供されるPower Appsでは、PowerPointでプレゼン資料を作成したり、Excelで関数を扱ったりする感覚でアプリを開発することができます。
    既存システムや外部のサービスと連携するコネクターも多数用意され、マイクロソフト製品のMicrosoft 365、Microsoft Azure、Dynamics 365、One Driveを筆頭に、Salesforce、Slackなど200種類以上のサービスと連携が可能です。

    ・参考URL:https://www.microsoft.com/ja-jp/biz/dynamics/power-platform.aspx

まとめ

SAP S/4HANAの導入では、「Fit to Standard」と呼ばれる標準機能を活用した導入手法が推奨されています。
しかし、「Fit to Standard」のみでは業務要件を完全に満たすことはできないため、最低限のアドオン開発は避けて通れません。
また、ERPパッケージの標準機能だけではカバーしきれない業務は別のシステムで対応することになり、周辺システムの開発も必要となります。
これらのシステム開発においてLCDPを利用することで開発生産性を向上できることから、既存レガシーシステムの再構築は加速することでしょう。

また、アプリケーション開発の技術的なハードルが下がれば、システム開発/保守の内製化が推進でき、IT人材の不足に対応できるかもしれません。
システム開発/保守の生産性が高まることで、コスト軽減が可能となり、セキュリティやデータ保持における適切な対応や、新しいIT投資を行うことが可能になります。
SAP S/4HANAなどのERPシステムのアドオン/周辺システム開発において、LCDPを採用するケースが、今後ますます増えていくことでしょう。

ISIDでは、SAPシステムのアドオン/周辺システム開発に有用なローコード開発プラットフォームとしてOutSystemsなどを活用したシステム構築をご支援しております。
弊社ホームページには、OutSystemの製品概要を説明した動画やLCDP製品選定のポイントをまとめたe-bookなどの資料を掲載しておりますので、是非とも、ご高覧いただけますと幸いです。

◆OutSystemsに関するWebページ:https://erp.isid.co.jp/solution/outsystems/

◆資料ダウンロード
・e-book:https://inv.isid.co.jp/lp/ebook/lcdp_outsystems
・サービス紹介資料:https://inv.isid.co.jp/lp/outsystems/service_introduction/

なお、本記事は2021年10月の情報を基に作成しています。
製品・サービスに関する詳しいお問い合わせは、各製品・サービスベンダーのサイトからお問い合わせください。