SAP BIを定着化させるトレーニングの勘所【前編】(vol.52)

2021.11.22

SAP ERPをデータソースとして構築したBIを経営や業務に役立てていくには、SAP BIツール導入時のトレーニングが不可欠です。エンドユーザーが主体的にBIツールを活用し、業務に役立てていくためのトレーニングの勘所をユーザー企業の導入事例に沿って解説します。
前編では、トレーニングの事前準備について解説します。
後編では、トレーニングの実施内容とその後の対応について解説します。

SAP BIのトレーニングを行ったユーザー企業のケース

SAP ERPユーザー企業A社では、SAP ERPの導入に合わせ、BIツールも導入しました。BIツールで分析を行う対象は主に会計データであり、全国各拠点および各関係会社の経理担当者が自由分析*を行います。BIツールを利用するエンドユーザー数は約200ユーザーです。

*自由分析:固定フォーマットのレポートを参照するのではなく、各エンドユーザーが個別で必要な形にレポートを作成/加工し分析を行う形態

A社は、BIツールを全社に展開し、定着化させていくためにトレーニングを実施しました。その結果、現在はエンドユーザーによる主体的な分析ができています。ではA社ではどういった取り組みを行っていったのでしょうか?

本ブログでは、トレーニングに向けた事前準備について重点的に解説します。
今回解説する内容には、トレーニングの事前準備だけではなく、BIツールの導入にあたって、そもそも決めておくべきことが多々含まれています。これらについてもBIツール導入時の勘所としてご参考にしていただければと思います。

SAP BIのトレーニングに向けた事前準備(体制)

なにごとも事前準備が肝心ですが、BIトレーニングに関しても同様です。トレーニングの事前準備として、トレーニング資料の作成などが最初に思い浮かぶかと思いますが、それ以外にも大事なポイントがあります。

まず一つ目は、推進体制についてです。
A社では主にレポート担当とシステム担当の役割を設定しました。

レポート担当は、エンドユーザーへの定着化支援が主な役割です。地域や業務分野ごとに各メンバーを割り当てることで、エンドユーザーへのサポートをスムーズに行う事ができる体制を構築しました。メンバーには、会計業務に明るく、SAP ERPへの入力業務やデータに詳しい人をアサインしました。そして、不明点が出てきた際には、適宜、SAP ERPの導入担当メンバーともコミュニケーションを取れるようなプロジェクト体制を早期のうちから構築しました。後段にも出てきますが、エンドユーザーがレポートを作成する上で何をデータソースとすればよいのか、といった質問が頻繁に発生するため、こうした体制を構築しておくことは非常に重要なポイントとなります。

システム担当は、BIツールの基盤やシステム運用のフォローすることが主な役割です。BIツールだけでも、多くの設定項目やシステム安定稼働に向けたフォロー項目があるため、SAP ERPのシステム担当者とは別でメンバーをアサインすることにしました。具体的なフォロー内容としては、SAP ERPからデータを取得するETLに関するフォロー対応、BIツールのアカウントおよび権限の管理、エンドユーザー向けのデータモデルの作成などを実施します。

SAP BIのトレーニングに向けた事前準備(環境)

BIトレーニングの事前準備として重要なポイントの二つ目は、環境面です。
ここではインフラおよびデータについて見ていきます。

まずは、インフラ面についてです。
エンドユーザートレーニングを行う環境は、本番環境、もしくは本番環境と同等のスペックを持った環境が望ましいです。前述の通り、A社のエンドユーザー数は約200だったため、トレーニング中に同時に多くのユーザーがアクセスを行う場合、スペックの劣る開発環境ではBIツールのレスポンスが遅くなる事が考えられます。スペックの劣る開発環境でのトレーニングは、パフォーマンス上の問題が発生した際にエンドユーザーの習熟度に悪影響を及ぼすほか、最悪、エンドユーザーのBIツールに対する不信感が高まってしまうことも考えられます。もし、本番環境もしくは本番環境と同等のスペックを持った環境の用意が難しい場合は、トレーニングを分散して開催し、一度に多くのエンドユーザーがBIツールに触れることがないようにするなどの工夫が必要です。

次にトレーニングに用いるデータについてです。こちらは本番データもしくはSAP導入段階であれば総合テスト時のデータを利用するなど、実業務に即したデータを用いることが望ましいです。おそらく本ブログをご覧になっている皆様はシステム方面に明るい方が多いと思いますが、トレーニングを受講するエンドユーザーの中にはシステム関係のリテラシーがあまり高くない方も含まれるため、実際の業務で発生しないデータがあるとそちらに気を取られてしまい、もともとのトレーニングの目的を果たせなくなってしまうことがあります。そのため、本番データなどの実業務に即したデータを用いてトレーニングすることが重要となります。

SAP BIのトレーニングに向けた事前準備(設定)

BIトレーニングの事前準備として重要なポイントの三つ目は、設定です。
設定には大きく3つの要素があります。

一つ目はデータモデルの作成です。これは(BIツールにより設定方法や考え方に違いはあるかと思いますが)、エンドユーザーがデータ分析をするにあたり、どのテーブルを用いるのかを決める、メインとなるテーブルと関連するテーブルとのテーブル結合を行う 等、BIで言うところのスタースキーマを作成する作業のことを指します。データモデルの作成にあたって、SAP BIであればSAP ERP側のテーブルの知識なども必要になるため、エンドユーザーに作成させるのではなく、仕様自体はレポート担当が決め、作業はシステム担当で行う、といった対応が一般的となります。

二つ目はユーザー登録です。
部署ごとに1つIDを作成するのか、エンドユーザーごとにIDを作成するのかを決め、トレーニングまでにユーザー登録を済ませておく必要があります。特にユーザーIDの追加、変更、削除の運用方針についてはこの段階で定めておいたほうが良いと考えます。

三つ目は権限設定です。
会社ごとのIT統制の方針にもよりますが、他部署のデータが見えないようにするなどのデータセキュリティ上のルールがある場合、BIツール上で適切な権限設定を行った状態でトレーニングに望みたいところです。また、本社の経理部門や経営企画部門などは全社のデータを参照するケースもあると思います。こうしたパワーユーザーについても適切な権限設定が必要となります。

SAP BIのトレーニング実施に向けて

ここまで、トレーニングの実施に向けて、また、運用定着化に向けて、事前準備として重要なポイントを解説しました。
後編では、実際のトレーニングの実施内容およびその後のフォロー状況について解説します。

SAP BIを定着化させるトレーニングの勘所【後編】(vol.53)