SAP BW S/4HANA対応のポイントとは?(vol.2)

SAP ECC(ERP Central Component)をご利用中の皆様は、サポートが2年延長され2027年になったとは言え、SAP ECCにあるシステム資産の棚卸や、アドオンの要/不要の整理、Cloud化など検討事項が山積していて戦々恐々とされているのではないでしょうか?
その中で気になってはいるけれど手が付けられていないSAPのBI PlatformであるSAP BWについて、SAP S/4HANA対応ポイントを解説していきます。
SAP BW S/4HANA対応はいつまでに?
SAPのBI PlatformとしてSAP BW(SAP Business Warehouse、以降BW)をお使いになっている場合、SAPをS/4HANA対応する際にBWも合わせて対応方法を検討する必要があります。
BWのS/4HANA対応とは、すなわちBW/4HANAに対応することを指します。
では、従来のBWの保守期限はどうなっているのでしょうか?
BWにおける最新バージョン7.5の保守期限は2027年12月、延長保守期限は2030年12月となっています。
また、バージョン7.0~7.4をご利用の場合は2020年12月となっており、既に保守期限を迎えているため、早急に7.5へのバージョンアップが必要です。
BWのバージョン7.5をご利用のお客様はずいぶん時間があるように思えますが、実はBWのS/4HANA対応においては検討すべき事項は多数あり、計画的に対応しないと間に合わないという事態に陥る可能性があります。
次項では、検討すべき事項について時間面、機能面、運用面という3つの側面から解説します。
SAP BW S/4HANA 対応は何を検討すれば良いの?
1. まず初めに時間面での検討ポイントを解説します。
前項ではBWのバージョンごとの保守期限について解説致しましたが、BW/4HANAにおいてもバージョン1.0とバージョン2.0があります。
バージョン1.0について最終サポートパッケージスタックであるSPS12については2021年6月が保守期限となっており、2019年4月にリリースされたバージョン2.0のSPS04の保守期限は2021年6月、2020年6月にリリースされたバージョン2.0のSPS05の保守期限は2025年6月とSPSごとに保守期限が定められており、SAP ECC(ERP Central Component)のS/4HANA対応の時期とBWのS/4HANA対応の時期の両方を意識して検討を実施しないと、ECCのS/4HANA対応とBWのS/4HANA対応が完了したと思ったら直ぐにBW/4HANAのバージョンアップを実施しないといけないということになりかねません。
時間面においてはECC、および、BW双方のS/4HANA対応の計画の整理から始め、ERPとしてSAPを使い続けるのか、BI PlatformとしてBWを使い続けるのか、といったところまで踏み込んで検討すべきポイントだと認識頂く必要があります。
2. 次に機能面での検討ポイントを解説します。
BWはBI Platformとして非常に優れた機能を有しており、また、データウェアハウスに必要なデータ抽出、蓄積、分析、配信という4大機能すべてをカバーするために多数のモジュールから構成されています。
業務要件、主にデータ分析要件になりますが、利用部門が要望する複雑な要件を実現するための機能が提供されており、カスタマイズやアドオン開発可能な箇所は多岐に渡っています。
優秀なコンサルタントが導入を担当していれば、どんな複雑な要件であっても要望を満たすべく各機能を駆使して実現したシステムが構築されているものと思われます。
ただし、これは裏を返すと、導入から年月を経て導入時に要件を提示した業務担当者、導入を担当したコンサルタントは既に離れてしまっており、導入を担当したベンダーとは異なるベンダーが保守しているような状況の場合、誰にもその全貌のわからないブラックボックス化された複雑怪奇なシステムがそこにあることを指します。
BWが高度なBI Platformであるが故に、お客様向けに実施されているカスタマイズやアドオン開発部分を把握することためには、時間を掛けて内容を整理することが必要となります。
機能面においてはBWで実現しているお客様向けのカスタマイズやアドオン開発部分のシステム規模を正確に把握し、S/4HANA対応として本当に必要な機能は何かということを洗い出すことが検討すべきポイントだと認識頂く必要があります。
3. 最後に運用面の検討ポイントを解説します。
BWについては長年の運用を経ることで、業務部門にてオリジナルレポートを複製、抽出条件や表示項目、業務ロジックを一部加工した亜種レポートを利用した運用おり、導入当初に存在していたレポートの何倍、何十倍のよく似たレポートが存在する状態になっていることが多々あります。
業務部門にて作成された亜種レポートは業務担当者の異動や組織変更が発生することで、BWのシステム上に利用されていないレポートが削除されず登録されたままになっており、これらを整理しないとシステム移行時に本来は移行不要なレポートまで移行するという無駄なコストが発生することになります。
運用面においてはBWで利用しているレポートを対象に業務部門とシステム部門は共同で、現在の業務上では利用されていない不要なレポートを事前に整理、移行に備える計画を立てることが検討すべきポイントだと認識頂く必要があります。
時間面、機能面、運用面において検討すべきポイントは多く、早め検討に着手しておく必要がありますが、検討に際して注意すべきポイントを次項で解説致します。
SAP BW S/4HANA 対応で注意するポイントは?
BWにおいてはBWのデータベース内のデータ操作に利用するレポートツールとしてBusiness Explorer(以降BEx)が提供されており、多くの業務ユーザーにて利用されているかと思います。
BExについてはWebブラウザで利用可能なBEx BrowserとOffice(Excel)をユーザーインターフェースに用いたBEx Analyzerの2つのモジュールで構成されています。
SAP BWのS/4HANA対応で最も注意すべきポイントは、BExが業務ユーザーにとっては日常業務で利用する慣れ親しんだ機能であるにも関わらず、次バージョンであるBW/4HANAではサポートされていないため、他のBI Platformでの再構築が必要となっているという点になります。
前項で解説させて頂いた時間面、機能面、運用面での検討すべきポイントに、BW/4HANAではBExがサポートされていないという注意点を加味して頂き、今後のS/4HANA対応において計画立案して頂くことをお勧めします。
また、SAP提供のBI PlatformについてはSAP Business ObjectsやSAP Analytics Cloudといった製品がありますが、SAP提供以外の製品もありますので、As Is、To Beを整理の上で、お客様に必要なBI Platformは何が最適かというところに立ち戻り、機能面、コスト面、運用面などを総合的に判断頂く必要があると考えていただければと思います。
なお、弊社においてはSAP S/4HANA移行およびBI Platform構築において多数の実績・事例・ノウハウを保有しております。
お客様のDX実現に向けたSAP S/4HANA移行ならびにBWのS/4HANA対応において、お困りの際はお気軽にご相談いただけますと幸いです。