SAPと他システムの連携で考慮すべきデジタルアクセスライセンスとは?(vol.65)

2022.3.28

基幹業務システムであるSAP ERPやSAP S/4HANA(以下、「SAPシステム」という)は、単体で業務を担うだけではなく、企業内外の様々な他システムと連携することで企業の業務プロセスを担っていることが一般的だといえます。また、働き方改革などを推進する上で、RPAなどのテクノロジーを活用した業務プロセスの見直しが進んでおり、SAPシステムと企業内外の様々な業務システムの連携は益々拡大する傾向にあります。

本ブログでは、SAPシステムと他の業務システムが連携する上で考慮すべきデジタルアクセスライセンスとは何か?、また、留意すべきポイントを解説します

SAPシステムを利用するためのソフトウェアライセンスの考え方

SAPシステムを利用する上で、以下の3つの「アクセスタイプ」があります。それぞれのアクセスタイプで必要なソフトウェアライセンスが必要になります。

  1. Direct Human Access:直接ヒューマンアクセス
    Direct Human Accessとは、SAPシステムに付随して(またはその一部として)提供されるインターフェースを経由して人がSAPシステムにログオンする場合に発生します。
    また、ユーザー数に基づいてライセンス付与されます。
    ※ 端的にいえば、SAPシステムのライセンスのことを指しています。
  2. SAP Application Access:SAPアプリケーションアクセス
    SAP Application Accessは、人、デバイス、またはRPA/ボットが、ライセンス付与された別のSAPアプリケーションを介し、間接的にSAPシステムを使用する場合に発生します。
    他の方法でERPがライセンス付与されている場合、適切にライセンス付与されたSAPアプリケーションによるアクセスで発生する使用に対して、追加のERPユーザーライセンスは必要ありません。
    なお、SAPアプリケーションとは、SAP Ariba、SAP Concur、SAP Intelligent RPAなどのアプリケーションや、業務ラインおよび業種別アプリケーション(オンプレミスおよびクラウド)と、SAP Solution Extensionsを指します。これには、テクノロジーソリューション(データベース、ミドルウェア統合、SAP Business Technology Platform など)は含まれません。
  3. Indirect / Digital Access:間接デジタルアクセス
    Indirect / Digital Accessは、非SAPフロントエンド、カスタムソリューション、またはその他のサードパーティアプリケーションなど、非SAPソフトウェアを介して(人間、デバイス、またはシステムが)間接的にSAPシステムを使用する場合に発生します。また、人間以外のデバイス、RPA/ボット、自動化システムなどが何らかの方法でSAPシステムを使用する場合にも発生します。
    ※ SAPシステムのユーザIDを保有せず、他のシステム経由等でSAPシステムに伝票等を新規登録する場合に発生します。
      また、SAPシステムのユーザIDを使って利用することはNGです。

次章では、上記の「3. Indirect / Digital Access:間接デジタルアクセス」におけるライセンスについて解説いたします。

SAPと他システムの連携で考慮すべきデジタルアクセスライセンスの概要

現在、企業内のシステムは、様々なデバイスの利用、サードパーティアプリケーションの利用、RPAなどの自動化システムの活用などにより、SAPシステム以外のシステムからSAPにシステム連携をするケースが増加しています。2018年4月にSAPは、より透明性が高く予測可能なものとなるよう、Indirect / Digital Access:間接デジタルアクセスに関する価格改定が行われました。

Indirect / Digital Access:間接デジタルアクセスのライセンスは、SAPが定義する以下の9つのドキュメントタイプごとにライセンス費用が発生する従量課金型の価格体系になっています。ドキュメントタイプによっては明細レベルでカウントするものや、乗数がことなるものがあるので注意が必要です。また、年間での想定ドキュメント量を算出の上で年間契約するのですが、年間契約終了時に契約したライセンスを使いきれなくてもリファンド(返金)がないため多めに契約するということが無いように留意する必要があります。もちろん想定量よりも実績が増えてしまった場合は超過分の支払いが発生します。

ドキュメントタイプ 内容 乗数
①販売
(明細レベルでカウント) 
販売伝票、受注伝票、販売契約伝票、販売分納契約伝票、見積書 等 1.0
②請求書
(明細レベルでカウント) 
購買伝票、購買依頼伝票、購買分納契約伝票 等
③購買
(明細レベルでカウント) 
請求書
④サービス及び保全 欠陥・不具合報告、サービス注文、メインテナンス注文、サービス通知、メインテナンス通知、サービス確認、保証請求 等
⑤生産 製造指書、プロセス指図、繰返製造確認 等
⑥品質管理 品質通知、品質結果通知、検査ポイント結果 等
⑦時間管理 タイムシート記録、報酬、休暇・欠勤、出勤情報、代替 等
⑧財務
(明細レベルでカウント)
会計仕訳伝票(入出金、振替、売上、仕入れ 等) 0.2
⑨入出庫
(明細レベルでカウント)
入出庫伝票 等

また、ライセンスの計算式は次の通りです。ライセンスは登録された最初のドキュメントに基づいて計算します。
ドキュメントの読み込み、更新、削除はカウントされません。
(ドキュメント(#)×乗数)+ ・・・ + (ドキュメント(#)×乗数)
(#)は上記9つのドキュメントタイプ

上記の考え方をもとに見積りを行いますが、見積りはSAPパートナーを交えて、次のステップで実施するのが良いでしょう。

  • Step1:SAPドキュメントの特定
    既存システムで処理している伝票で、今後SAPシステムへIndirect / Digital Access:間接デジタルアクセスとして処理予定の伝票タイプを特定する
  • Step2:カウントレベル確認(年間明細数・伝票数)
    年間伝票数、もしくは年間明細数(伝票によっては年間明細数、明細数が不明確な場合はAverage)を算出する
  • Step3:ドキュメントタイプに準じた乗数適用
    伝票タイプに準じた乗数を適用し、年間ライセンス数量を算出

上記のプロセスによりライセンス合計数に準じたライセンス料の見積りが算出できます。見積りの作成については、DAES(Digital Access Evaluation Service)という専用の算出ツールをSAP社で用意しているため、弊社などのSAPパートナーにお気軽にご相談ください。

なお、Indirect / Digital Access:間接デジタルアクセスは、SAP社によるライセンス監査において監査対象となります

まとめ

基幹業務システムであるSAPシステムを使う上で、他システムと連携した業務の遂行は、もはや一般的であるといえます。昨今ではUiPathなどのRPAを活用して、データ登録等を行い、働き方を改善するようなケースが増えていると思います。このような他システムで作成した情報をSAPシステムに伝票等の形で登録する場合、Indirect / Digital Access:間接デジタルアクセスというライセンスが必要であることがご理解いただけたと思います。
最後にポイントとなる部分を以下の通りまとめました。

<ポイント>

  • 他のシステム等からSAPシステムへドキュメントを新規登録するケースが対象
    ⇒ SAPシステムからデータを抽出して他のDWHに移すようなケースは対象外
  • SAPシステムの個人ユーザIDを使ってRPA等でデジタルアクセスで利用することはNG
  • 年間でのドキュメント数量で契約
    ⇒ 使わなかったライセンスのリファンド(返金)がないことに注意
    ⇒ 契約数を超過した場合は超過分の精算が必要
  • 専用ツールを使って見積もるため、弊社のようなSAPパートナーに相談することが必要
  • SAP社によるライセンス監査での監査対象となる

本内容は2022年2月25日時点の情報をもとに整理したものです。より詳細な内容をお求めの際は、ISIDのWebサイトからお気軽にお問い合わせください。
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