SAPデータを活用した経理部門のDX推進のポイントとは?(vol.61)

2022.1.31

昨今、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)という言葉がバスワード化していますが、その本質について正しく理解できているでしょうか?
ペーパーレス化、リモートワーク、クラウドシフトといった取り組みをすることがDXなのでしょうか?

また、企業のお金の流れを司る経理部門こそ、DXの必要があるのではないでしょうか?
Yesとすれば、経理部門はどこを目指し、どのようにDXを推進すればよいのでしょうか?

このような疑問を解消すべく、本ブログでは、改めてDXの本質を振り返ったうえで、経理部門が目指すべき方向性を提示。そこに向かうために必要となるSAPデータを活用したDX推進において考慮すべきポイントや、SAPデータを活用した分析および更なる利活用の方法を解説します。

DXの本質とは?

経済産業省から公表されたDXレポートは有名ですが、そこに記載してあるDXの本質について正しく理解できているでしょうか?

DXレポートには「2025年の崖」として、現状のITシステムが有する課題が紹介されており、この対応が急務であることが示されています。

  1. システム面の課題
    ・既存システムの老朽化/複雑化/ブラックボックス化
    ・サポート終了などに伴う現行機能維持リスク
    ・メンテナンスコストの増大(=技術的負債)
    ・DX推進への“限定的な”新規投資
  2. 組織面の課題
    ・DXによるビジネスモデル変革への経営層の関与の希薄さ
    ・個別最適化されたシステムを全体最適化/標準化することへの各事業部の抵抗
    ・企業全体での情報管理/データ管理が困難
  3. 人材面の課題
    ・既存ベンダーへの依存
    ・ユーザ企業の有識者の退職や人材育成難によるIT人材不足

しかし、これらの課題への対応策として挙げられることの多い“レガシーシステムの刷新”は、DXの本質ではありません。DXレポートでは、DXの本質は“事業環境の変化に迅速に適応する能力”と“企業文化の変革”にあると記載されてあります。「2025年の崖」への対策として、この2点を反映した対応方針の策定が重要となります。
DXレポートには、先述の3つの側面の課題から、上記2点を反映した対応策も記載されています。ポイントとなりそうな箇所を抜粋・要約したものが以下です。

  1. システム面の課題への対応策
    ・情報資産の現状を分析/評価し、棚卸を実施
    ・アジャイル開発の適用
  2. 組織面の課題への対応策
    ・ITシステム刷新に関する経営層による中長期的なコミット
    ・経営戦略と業務に合わせた全体最適の実現
  3. 人材面の課題への対応策
    ・経営改革をITシステムに落とし込める人材の採用/育成
    ・AI活用などができるデータサイエンティストの採用/育成

これらの対応策を3つのポイントとして以下の通りまとめます。

  • 経営層による中長期的なDXへのコミットと、経営改革の目指すべき方向性の明確化
  • 各事業部におけるDXによる変革をリードする人材の育成
  • 外部ベンダーを用いたITシステム(ERPなど)の刷新のみに頼ることなく、デジタルツールを用いたアジャイル開発を内製で実現

次章では、これらのポイントを踏まえながら、経理部門が目指すべき方向性について解説します。

SAPデータを活用した経理部門が目指すべき方向性

私は、企業のお金の流れを司る経理部門こそ、DXの必要があると考えています。
今後、デジタルテクノロジー=自動化や分析技術の急速な発展に伴い、経理部門の担うべき役割は、経営の意思決定を支援することにシフトしていきます。人材の配置・構成が大きく変わり、新たな役割やスキルが求められるようになります。
では、どのようにシフトしていけばよいのでしょうか?
経理部門が目指すべき方向性と役割の変化を以下に示します。

  1. 現状:
    個別最適化された(一連の)処理業務遂行が目的となり、各法人/地域などにサイロ化/分散化された組織
  2. 自動化/効率化:
    自動化や業務改善を通して、個別最適化された(一連の)処理業務をスリム化
  3. 高度化:
    提供価値をリアルタイム性の高い洞察(インサイト)にシフト

現状は、個別最適化された(一連の)処理業務遂行が目的となり、各法人/地域などにサイロ化/分散化された組織です。
ここから、組織の見直し、人材/スキルの変革、業務プロセスの効率化、ルーチン業務の自動化などを通じて、処理業務を削減し、スリム化します。
そこから更に、AI/アナリティクスの活用、アーキテクチャの最適化、高度な業務の自動化、役割と人材配置のシフトを通じて、経理部門の主要な役割は、リアルタイム性の高い洞察(インサイト)を提供することとなります。

目指すべき方向性はわかりましたが、具体的にどのようにして変革していけばよいのでしょうか?

SAPデータを活用した経理部門におけるDX推進のポイント

まずは、既存ITシステムの変革にあたり、有効な領域を特定します。
その後の方針としては、要件定義で必要な機能を明らかにしたうえでITシステム化していくこともできますが、すべてをERPのアドオンとして開発するのではなく、デジタルツールを活用してアジャイル開発するという選択肢もあります。アジャイル開発を通じて、DX推進に関する様々な効果が見込まれます。

デジタルツールを活用してアジャイル開発することで、「2025年の崖」への対応として見込まれる期待効果は以下の通りです。

  • ブラックボックス化解消
    実施したい取り組みに関与して要件定義を明確化
  • 老朽化・複雑化解消
    サポート終了による機能維持リスクの低減
  • 変化への柔軟な対応
    デジタルツール活用による開発期間の短縮
  • IT人材の育成
    内製化によるITリテラシーの向上
  • 経営変革への関与
    改革を実務に落とし込めるリーダーシップの育成

経理部門におけるエンドツーエンドのDX推進を実現するためには、ITシステム(ERPなど)によってカバーされない、従来から手作業で対応している領域の変革が必要となります。具体例としては、経理部門による修正仕分けの作成や、ERPの外側へデータを抽出し、それを加工して報告・管理資料を作成するといった作業です。この手作業で行っている領域を、デジタルツールを活用して自動化/効率化しない限り、高度化は実現しません。

では、大規模なITシステムの改修を伴わないデジタルツールを活用したアジャイル開発による経理部門のDXとは、どのようなことが考えられるでしょうか?

SAPデータを活用した分析・更なる利活用の方法

経理部門におけるDXの例として、以下が挙げられます。

  1. 管理資料の自動作成
    経営管理資料のような反復的に作成される資料の情報収集・加工を自動化し、ダッシュボード上でタイムリーに反映
  2. 異常値モニタリングの自動化
    過去の誤謬や不正の原因を分析し、その結果に戻づくシナリオに沿って異常値をモニタリング

ISIDは、EMPHASIGHT(エンファサイト)という、経営モニタリング&不正検知ソリューションをご提供しています。
EMPHASIGHTは、SAP ERPのデータを抽出し、直観的なUIにより効率的な分析を実施。プリセットされた財務指標・リスクシナリオを活用して様々な切り口の分析が可能なほか、同一地域・類似事業の子会社間比較など網羅的な視点でデータ分析することにより、不正兆候の早期発見を可能とします。

EMPHASIGHTは、主に以下2種類の機能をご提供しています。

財務諸表分析(広く浅く網羅的に)

財務諸表をベースに経営指標を分解し、比較分析/異常値の可視化とそれに対するコメントを記録する機能をご提供します。
(データソース:連結会計システム)

<財務諸表分析機能の特徴>

  • ビジュアルなダッシュボードによる比較分析や根拠となる数値データまで一気通貫でドリルダウンが可能
  • 軸の切替/拡大縮小/対象増減などを直感的に操作でき、分析作業を効率化
  • 経営に関する財務指標をプリセットされたテンプレートからマスタ設定可能

トランザクション分析(狭く深く重点的に)

会計監査系コンサルティング会社監修のもと作成したリスクシナリオを標準搭載しており、企業不正の代表例である粉飾決算や横領の兆候発見を可能とします。
リスクシナリオ一覧から機能選択、追加し、データ分析を実現。不正兆候や業績予想への影響などを可視化し、調査対象の特定から調査進捗管理までのタスクを一元管理します。
(データソース:SAP ERPシステム)

<トランザクション分析機能の特徴>

  • 取引明細レベルの監査対象データをSAP ERPから自動抽出することで、データの信頼性を担保
  • 日時バッチで自動抽出したデータをリスクシナリオ分析することで、定常モニタリングを可能とし、異常値を早期発見
  • 調査の結果、気になる項目には数値とともにコメントを記録・共有することで、調査結果の属人化を排除し、調査過程のノウハウを蓄積

【ご参考URL】
EMPHASIGHTご紹介ページ:https://erp.isid.co.jp/solution/emphasight
EMPHASIGHT基本ガイドブック:https://inv.isid.co.jp/erp/guidebook/emphasight

まとめ

ここまでの内容をまとめます。

  • DXの本質は“事業環境の変化に迅速に適応する能力”と“企業文化の変革”
  • DXによる自動化や分析技術の急速な発展に伴い、経理部門の担う役割は“意思決定を支援すること=リアルタイム性の高い洞察(インサイト)の提供”にシフト
  • 既存ITシステムの変革に向けて、有効な領域を特定し、その領域に対してデジタルツールを活用したアジャイル開発を実施することが重要

上記に加え、経営判断に関わる数値を取り扱う経理部門におけるDX推進には、業務効率化/高度化と並行して、「信頼できる数値をタイムリーに作成することを担保するプロセスの構築」が重要となります。

ISIDは、SAP専用のデータ連携フレームワーク:BusinessSPECTREをご提供しています。BusinessSPECTREは、SAPに格納された大量の業務データを素早く抽出し、Microsoft SQL Serverへの転送を実現します。経営分析や予算管理など、SAPデータをさまざまな用途で活用し、且つ、データへのアクセス権限を踏襲した高速のSAP BI環境をご提供します。
SAPデータを活用したDX推進をご検討の際は、是非、ISIDへお声掛けください。

【ご参考URL】
BusinessSPECTREご紹介ページ:https://erp.isid.co.jp/solution/sap-bi-businessspectre/

 

本記事は、2022年1月31日時点の情報を基に作成しています。製品・サービスに関する詳しいお問い合わせは、ISIDのWebサイトからお問い合わせください。
https://erp.isid.co.jp/inquiry/