SAP BW システムがブラックボックス化する理由とは?(vol.39)

2021.8.3

SAP NetWeaver Business Warehouse(以下、SAP BW)をご利用中の皆様は、システム内部がブラックボックス化してしまいメンテナンスにお困りになっているのではないでしょうか?

その理由はSAP BWシステムのアーキテクチャーにあります。

本ブログでは、SAP BW システムのアーキテクチャーについて3つの主要機能を中心に解説のうえ、SAP ERPのデータ活用基盤として提供されているSAP BWシステムがブラックボックス化する原因を紐解きます。

SAP BW システムのデータ抽出機能とは?

データ分析で使用するデータソースからの抽出機能は、一般的にETL(Extract/抽出、Transform/変換および加工、Load/書き出し)と呼ばれます。
SAP BW システムにはSAP ERP専用のETL機能が備わっています。
また、非SAPデータを取り込むためにファイルインターフェースおよびBAPI(ビジネスアプリケーションインターフェース)も備わっており、SAP ERPと外部のデータを別々に取り込んで統合することが可能です。

SAP BW システムへのデータの取り込みは、まず、
①インフォパッケージ と呼ばれる機能を使用して
②PSA(Persistent Staging Area) というデータ受信専用のテーブルに格納する
ことではじまります。
※このPSAはBWデータソースと呼ぶ場合もあります。

PSAに取り込まれたデータは、
③DTP(データ転送プロセス) と呼ばれる機能を使用して項目マッピングや加工などの変換処理を行い
④DSO(データストアオブジェクト、バージョン3.xではODS) にデータ分析を行うための最小粒度の情報として格納
されます。
※DSOに格納データされたデータは後述のレポート機能から参照することも可能です。

次に、DSOに格納されたデータは、
⑤インフォキューブ と呼ばれる機能で多次元データセットに変換され、
データ分析に利用できる形式でレポート機能に提供されます。
※インフォキューブについてはファクトテーブルとディメンションテーブルを論理的に結合することで
スタースキーマとして実装されます。

レポートの要求仕様を実現するための業務ロジックの組み込みは、SAP側にABAPプログラムで実装可能なことはもちろんですが、SAP BW システムへのデータの取り込み時の処理に組み込む場合、③DTPにおける変換ルール定義やABAPプログラムで実装することが可能です。

これらの実装は一般的にシステム部門やベンダーが行いますが、SAP BW システム側での実装については仕様変更時にドキュメントが更新されていない もしくは ドキュメント化されていない場合が多く、要求仕様がどのように実装されているかの把握が困難であることも少なくありません。

SAP BW システムのレポート機能とは?

SAP BW システムでは、データ抽出機能によって取り込まれたデータはインフォキューブと呼ばれる多次元データセットに保持されています。

データセットの分析を行うためには、
⑥SAP Business Explorer(以下、BEx)クエリ と呼ばれるクエリを、BExクエリデザイナというツールで定義します。
※クエリデザイナでは論理式を使用してキー数値を再計算し再使用可能な演算キー数値や
特定条件にフィルタした制限キー数値というものを定義できる他、軸やキー数値を構造という
コンポーネントにまとめることも可能です。

BExクエリデザイナで作成した⑥BExクエリは、レポートのフロント機能である
⑦BExアナライザ や
⑧BEx Web
から呼び出してレポートレイアウトを作成することで、業務に必要なレポートとして定義します。

⑦BExアナライザや⑧BEx Webにおけるレポートレイアウトの作成については業務部門のレポート利用者自身である場合が多いです。

一方、⑥BExクエリの定義については、業務部門の他、システム部門やベンダーが実施している場合も多数あります。
ただし、⑥BExクエリは、仕様書はおろか要求仕様書についてもドキュメント化されていない場合が多く、実装されている業務ロジックの意味を把握することも困難な状況が多くなっています。

SAP BW システムのベストプラクティスサンプルとは?

SAP BW システムには、世界1万社以上のSAP ERP導入におけるノウハウが蓄積されたビジネスモデルに基づいて提供されるベストプラクティスサンプルである
⑩ビジネスコンテンツ と呼ばれる開発テンプレートが付随しています。

一般会計、人事管理、販売管理、購買管理、顧客管理、電子商取引といったSAP ERPの各モジュールのデータをレポーティングおよび多次元分析するために必要となる定義済みのコンポーネントがテンプレートとして提供されています。

前述のデータ抽出機能やレポート機能で作成する①インフォパッケージ、②PSA、③DTP、④DSO、⑤インフォキューブ、⑥BExクエリといったものが事前定義されていますので、SAP BW システム導入の際は、これら①~⑥の定義をカスタマイズして導入することでスピーディに運用にのせることが可能になります。

ただし、カスタマイズに際しては、①~⑥の役割を理解しておく必要があり、高度なスキルが要求されます。そのため、一般的にはカスタマイズは専門のベンダーに依頼することが多く、システム部門でも内容を把握できていないことが多々あります。

SAP BW システムのアーキテクチャーまとめ

SAP BW システムは非常に高機能ではありますが、

  • 要求仕様に対する業務ロジックの組み込み箇所が、データ抽出機能やレポート機能を横断して数多く存在する
  • ビジネスコンテンツという優れたベストプラクティスサンプルを有しており、カスタマイズも可能である

といったアーキテクチャー特性を有しています。

これらの特性を利用し、変化の激しい経営環境に追従すべく長年の運用で繰り返し仕様(業務ロジック/カスタマイズ)変更を行った結果、システム内部が不透明になってしまい、誰も把握できないブラックボックスと化してしまっているSAP BWユーザーが多いのではないかと推察しております。

SAP BW システムの後継である、SAP BW/4HANAでは前述のレポート機能である⑦BExアナライザが廃止されており、別のBIツールに移行する必要があります。
SAP BW/4HANAへの移行を検討される際には、メンテナンス性の高いシステム運用環境を再構築する良い機会と捉え、現在運用されているSAP BW システムの見直しをお薦めします。

ISIDは、SAP S/4HANA移行対応 ならびに SAP専用BI Platform構築において多数の実績・事例・ノウハウを保有しております。
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