不正会計の要因と抑止策を知ろう! ~データ分析による不正発見アプローチとは~(vol.47)

2021.10.5

企業の不正会計の報告件数が、近年増加傾向にあります。
もし、不正会計が発生してしまうと、その事案に対する調査委員会の設置や遡及しての決算訂正、加えて横領のような事件性を伴う事案であれば刑事告訴など、対応に多大な労力を強いられることになります。
また、それだけでなく、再発防止のための対策も必要となります。

そこで、本ブログでは、不正会計の要因、発生メカニズムから防止策、不正兆候を早期発見するための有効なアプローチなどの基礎知識を紹介します。
さらに、テレワーク環境下でも不正兆候発見を可能とするデータ分析を活用した不正発見の手法を解説します。

不正会計の発生メカニズム 不正のトライアングルを理解する

「不正会計は悪意を持った経理担当者や経営幹部が企むもの」といったイメージはありませんか?
その認識はある部分は正しく、ある部分では間違っています。

組織内で行われる不正の多くは、ホワイトカラー犯罪という分野で研究されています。
ホワイトカラー犯罪という言葉は、Edwin H. Sutherlandの1939年のアメリカ社会学会の会長演説において初めて用いられました。
ホワイトカラー犯罪の定義のひとつとしては、Albert J. Reiss, Jr.とAlbert Biderman が提唱した「ホワイトカラー犯罪とは、不正な利益を得るため、もしくは個人的・組織的な利益を得るべく不正行為を行うために、自らの経済力や影響力または経済的・政治的に責任のある地位の濫用を伴う、刑罰の対象となる法律違反である」という定義があります。
悪意をもった個人が企むだけでなく、組織的利益を得るべく組織ぐるみで不正行為を行うことまで見据えてホワイトカラー犯罪を定義している点が、非常に興味深い点です。(※)

ホワイトカラー犯罪者の人物像について、現在まで多くの研究がありますが、その中でも特に有名なものがDonald R. Cresseyによる「不正のトライアングル」仮説です。
不正のトライアングルとは、不正発生には、「動機」 「機会の認識」 「正当化」 の要因が揃ったときであるとの仮説です。

(図:不正のトライアングル)

Cresseyの研究では、横領犯に関する研究において、調査対象のほとんどが「横領を決心するまでの間、自分の財力を超えた生活をしていた」ことに注目しています。これが「動機」にあたります。
また、ホワイトカラー犯罪のほとんどの被告人は、中程度の社会的地位にある人物であったり、経営幹部職だったりとの研究もあります。これは、犯罪の「機会の認識」ができる立場にある人物であることを示しています。
さらには、ホワイトカラー犯罪の被告人は、他の犯罪者に比べて裁判を求める傾向が強いとの調査があります。これが「正当化」を裏付けているといえます。

もう少しわかりやすい例でお話すると、皆さんの会社のオフィスの会議室に、1,000円札が落ちていたとします。これを拾って自分のものにしてしまうかどうか、という場面を想像します。
もし自身が生活に困っていて少しでもお金が欲しいと思うかどうか、これが「動機」にあたります。
仮に動機があったとしても、会議室に監視カメラがあったり、他人の目があれば、お金を取ることはないと思います。
しかし、もし誰にも見つからないとしたら、「機会を認識」して、お金を取ってしまうでしょう。
最後には、自身の良心と照らし合わせて、「1,000円くらいなら、落とした人もそれほど困らないはず」 「自分はこの会社に対して頑張っている割に報われてないから、これくらいのラッキーがあってもよい」 などの「正当化」心理が働くと、最終的に「お金を拾って自分のものにしてしまう」という行動に結びつく、ということになります。

さて、こういったホワイトカラー犯罪を防止、抑止する場面において、「動機」 「機会」 「正当化」 それぞれに対して対策が必要になります。
例えば、従業員の働きに対して十分な報酬を与えることは犯罪動機を軽減するでしょうし、会社全体が不正に対する断固たる措置を表明していれば、犯罪に対する正当化心理も発生しにくくなるでしょう。
また、組織として法令違反を犯さないこと、コンプライアンス遵守のうえでの健全な成長を求める等、経営者のコミットメントの表明も非常に大切です。
そういった対策の中でも、特に不正「機会」に対する対策は、仕組み作りで非常に高い効果をあげることができます。

※出典:(ACFE /公認不正検査士協会)
「不正検査士マニュアル【要約版】」(P.339~340 ホワイトカラー犯罪)

不正会計の抑止策 不正機会に注目する

さて、不正会計に関して考察をしていきます。

現在、企業会計情報は、制度会計に基づく単体会計報告のみならず、グループ連結決算含め管理会計目的でも非常に重要な情報になっています。
特に、海外子会社からの報告に関しては、定性、定量両面の報告を受領することになりますが、2020年以降、コロナ禍で海外出張も困難な中、子会社から上がってきた定量情報である会計数値は注意深く見る必要に迫られています。
子会社側からすると、数値情報を裏付ける取引事実を隠しやすくできる状況にもなっています。
子会社側の駐在員に不正の動機、正当化理由がなくとも、「機会」が存在することは紛れもない事実です。
そこで、グループ統制の観点から、「機会」に着目した不正対策が必要になってきます。

会計不正機会を抑止する方法としては、入出金や経理処理に承認プロセスを組み込み、不正機会を発生させないような予防的統制の手法や、不正や誤謬を監査等の方法で調査する発見的統制の手法があります。
一方の手法だけでなく、双方の手法を採用することが望ましいと言われています。
発見的統制の手法としては、内部監査等でのレビュー、証憑の入手、実地棚卸等が該当しますが、昨今、財務情報や取引データの分析により、効率的な発見的統制を実現することができるようになってきています。

不正会計の手口と兆候 データ分析で検知する

不正会計については、わかりやすいものから、見抜きにくいモノまで、様々な手口があります。

例えば、顧客からの入金を担当する社員が、横領により着服した金額を隠蔽するため、他の得意先からの回収金を当該横領の対象となった口座の入金に充当するという、ラッピングと呼ばれる手口があります。
この手口は、一度行うと、辻褄合わせのため、次から次へとラッピングを繰り返す必要がでてきます。
また、横領額が増えてくると、売上債権回転期間が徐々に大きくなってくるといった兆候が出てきます。

これをデータ分析で検知しようとすると、会計報告レベルでは、時系列で売上債権回転期間を評価することで気づくことが出来るかも知れません。
さらには入金消込のパターンを評価し、処理期限を越えた消込情報を、会計トランザクションレベルで分析するといったやり方もあります。
経理担当者や監査担当者が、こういった分析をExcelで分析することも可能ですが、昨今ではERPのDWH(Datawarehouse)なども広まってきていますので、このDWHの情報を分析することで、分析精度や回数を上げていくことができるようになります。

SAP ERPのDWH構築の知見を数多くもつISIDでは、DWH上での不正会計検知の仕組みを構築するお手伝いもさせていただいています。

まとめ

不正会計対策として、“これだけ対策すれば十分”といった特効薬はありません。
しかし、これまで長年の不正研究により、発見の仕方、抑止・予防方法については多くの成果があります。

ISIDでは、データ分析観点からのソリューションとして「EMPHASIGHT」を提供しています。
EMPHASIGHTご紹介ページ:https://erp.isid.co.jp/solution/emphasight

今後も、不正調査領域から見た企業不正の抑止/予防策などを情報提供していきたいと考えています。
以下のダウンロード資料内に、データ分析の活用で発見可能な不正兆候例などを記載しておりますので、ご興味がございましたら、是非ともダウンロードしてみてください。

EMPHASIGHT 基本ガイドブック:https://inv.isid.co.jp/erp/guidebook/emphasight

公認不正検査士 柳沢 学