SAP BIツール 4つの選定ポイントとは?(vol.10)

2021.2.8

SAP BIを実現するツールはSAPをはじめとして様々なベンダーから提供されています。
それぞれ特徴があり、比較検討に悩まれているお客様から相談を受けることがあります。
お話を伺うと、詳細な機能比較にハマり、それが目的化してしまい、結局どのツールが自社に合うのかが自分たちでは判断できないと言われるケースやすでにBIツールを導入しているが上手く活用できていないなどのケースが散見されます。
ツールを選定するためにはBIを使用するエンドユーザを特定し、それぞれの使い方を把握することが大切になります。

本ブログでは、エンドユーザ別に具体的なツール選定の進め方について、解説します。

SAP データ活用を実現するためのBIツールとは?

SAP ERPでは日々の業務(.受注、出荷、請求など)のデータが伝票データとして蓄積されていますが、それらのデータを活用して将来の売上を予測したり、適正在庫を把握したりというような課題を解決するものとしてBI(Business Intelligence)ツールがあります。
最新のSAP社のERPであるS/4HANAではBIツールの機能の一部を包含していますが、実現したい課題解決によっては別のBIツールの使用を検討する必要がでてきます。

BIツールはSAPを始め、筆者が取り扱うことの多いMicrosoft社などの各ベンダーが提供しており、昨今では多機能化が進んでいるため、自社にあうBIツールの選定に悩まれているお客様から相談を受けることが増えてきました。

一般的なBIツールの機能としては、ETL/DWH/モデル(データマート)/レポートといった各サブ機能をトータルで提供するものやレポート機能だけを提供し、他のツールとの組み合わせで使用するものもあり、選定の際の選択肢を増やす要因となっています。

ETL/DWH/モデル(データマート)ERPやその他のシステムからのデータを収集し、分析しやすいようにデータの加工や情報の付加を行うという地味ながらBIツールのキモとなる部分になります。
しかしながら、BIツールの選定の際には比較対象が膨大になるため、レポートの機能比較から始めることをお勧めしています。

次項からはレポート機能に着目したBIツールの選定のポイントについて解説します。

SAP BIツールの選定ポイント① エンドユーザを特定する

レポートの機能からBIツールを選定するのをお勧めしているのは、「デザイン」や「操作性」といった理解しやすい比較項目であることで、専門的な知識がなくても判断を誤る可能性が低いからです。
ただし、低いといっても、落とし穴もありますので注意が必要です。
一般的にBIツールの選定を始めるにあたっては、「ベンダーやインターネットの情報からBIツールの機能比較表を入手する」、「気になったBIツールの情報収集や(ベンダーを呼んで)デモの実施を行う」、「BIツールを使用する予定の社内部門向けにアンケートを実施する」といったところから入ることが多いようです。
筆者が相談を受ける段階も上記の完了直後や情報収集の一環として依頼されることが多いのですが、「集まった情報をどう整理して比較してよいのか分からない」、「比較してみたが、どれがよいのか分からない、もっと細かい機能比較が必要なのか?」といった悩みを抱えているようです。
このような場合、筆者は細かい機能比較よりも具体的なエンドユーザの特定から入ることをお勧めしています。

先程の「BIツールを使用する予定の社内部門向けにアンケートを実施する」というのは方向性としては非常にすばらしいと思います。
ただし、アンケート先が特定の部門に偏っていたり、階層の違う(例えば経営層と受注の入力担当者)人に同じ質問を投げかけていたりと、残念なアンケート結果になってしまっている場合もあるようです。
先の経営層と受注の担当者では同じ『売上』のデータであっても見たい切り口や粒度、時間軸などが異なります。
経営層は全社や事業部門といった切り口で数年単位のデータをみたいと思っているのに対して、受注担当者は自分の担当するお客様の前回の出荷分のデータがみたいといったケースです。

では、どの階層のユーザにどのような順番でヒアリングしていけばよいのでしょうか?
エンドユーザが限定されていない(通常決まっていないことが多い)場合は、経営層一般ユーザ層データ分析担当の順番でユーザ特定していくことをお勧めします。

次項からは各階層向けの具体的なBIツールの選定方法についてお話します。

SAP BIツールの選定ポイント② 経営層向けダッシュボード

BIツールのユーザ特定にあたって、まず経営層からスタートした方がよいとお勧めしましたが、理由としては比較項目が比較的に少なく決めやすいからです。
また、一般ユーザ層向けに様々な比較を行ったあとで、経営層向けの機能が不足しているため却下になるというケースもあり、無駄を省くという意味もあります。

筆者はBIツール関連の仕事を始めて10年以上になりますが、ここ数年で「経営層向けのダッシュボード」を検討しているという話を聞くようになりました。
経営層は当然BIツールのユーザターゲットではありましたが、「経営層向け」を第一に考えるという選定方法が認知されてきたのは最近になります。

ダッシュボード機能をもったBIツールとしては、SAP社ではSAP Analytics Cloud(SAC)が候補にあげられることが多いですが、少し前まではSAP BusinessObjects(BO)シリーズ内のダッシュボード機能などしかなく、少々物足りない感じでした。
「ダッシュボード」という言葉を一般的に普及してきたのは、世界シェアの高いTableauやMicrosoft社のPower BIの功績が大きいのではないかと筆者は考えています。

先の3つのツールに加え、ダッシュボード機能をもつBIツールも増えてきましたが、ダッシュボードの基本機能であるチャート(グラフ)については細かい違いはあるものの、各ベンダーが改善を繰り返しているため、その違いも吸収されて比較優位性がなくなっている(どれを選んでも大差がない)と考えられます。
また、「経営層」=「ダッシュボード」という考え方も変化してきていると感じられます。
BIツール以前はこのような経営層が判断に使用するものは紙の資料(経営会議の資料など)でした。
紙の資料では気になる点があっても、別の資料を用意するしか方法がありませんでしたが、BIツールはダッシュボードで異常値などを発見すると、その原因を探るためにドリルダウン(例.国別⇒都道府県別)や、ドリルスルー(SAPでいうと伝票明細まで遡る)が実施したくなります。

ダッシュボードツールでドリルダウンやドリルスルーを実現する場合、気をつけなければならないのはデータ量の制限です。
ダッシュボードツールは保持できるデータ量やデータ件数に上限が設けられているものがあります。
回避方法としては、ダッシュボードから外部のDWHを参照する、もしくは他のBIツールの組み合わせなどで要件を実現することになりますが、この辺りは専門的になりますので、ベンダーと相談しながら進めることをお勧めします。

SAP BIツールの選定ポイント③ 一般ユーザ向けレポート

一般ユーザを経営層の後にしたのは、要件が多彩なために全てを満たすものを検討すると非常に時間がかかってしまうためです。
実際には全ての要件を満たすBIツールは存在しないこともありえますから、ある程度の「割り切り」が必要になります。

「割り切り」も上手くやらないといわゆる「使われないBIツール」になってしまいますので、注意が必要です。
筆者のお客様でも部門毎に違うBIツールを使われており、すでに「使われないBIツール」が稼働していて別のツールに置き換えたいといったお話や相談をいただきます。
筆者の考えでは複数のBIツールを使用されることは必ずしも悪いことではありません。
先のダッシュボードツールとDWHツールの組み合わせなどが例となりますが、ETL/DWHまでを共通化しておき、モデルやレポートについては部門にあったものを採用するというのもよいでしょう。

SAP ERPの場合はETL/DWHをどのように構築するかというのが課題となります。
通常、分析したいデータはすべてERPの中にあるわけではなく、外部のシステムや手元のEXCELなどのデータもあわせて分析したいという要件もあるかと思います。
その場合、外部データをERPに取り込むか別のDWHツールを導入するかということになりますが、前者は色々と課題があるため、後者になる場合が多いようです。

SAP BIツールの選定ポイント④ データ分析担当者向け機能

最後にデータ分析の担当者向けの機能について少しだけお話します。
いわゆる「データサイエンティスト」という職業が話題ですが、実際には経営企画の方が実施されているなど、まだまだ専門の方は少ないのが現状のようです。

データ分析担当の方であっても、BIツールの利用はお勧めです。
初心者の方やデータ分析に時間が取れない方はSAP Analytics CloudSmart Predictなどを使用すると簡単な分析はオールインワンで実現できます。
しかしながら、少し慣れた方や専門家の方には物足りないと感じられるかもしれません。
その場合でもETL/DWHまではBIツールを使用することをお勧めします。

ERPなどのデータから予測データを作成する場合、昨今は流行りのAIや機械学習を利用されることもあるかと思いますが、大変なのはERPのデータを分析に適した形に加工する部分になります。
BIツールのETL/DWHでそちらを実現しておけば、データ分析の際にはDWHのデータを利用して時間短縮をすることが可能です。
筆者のお勧めとしてはEXCELと親和性の高いBIツールがよいと思います。
EXCELの分析機能は多彩で、AIで実施するような統計解析の計算も一部であれば実現できてしまいます。
上級者の方はRPythonといったプログラミング言語を使って分析を実行することもあるかと思いますが、DWHからEXCELに取り出したデータをJupyter notebookなどから取り込むというのが、お手軽かと思います。

まとめ

SAP ERPを使用されている場合のBIツールの選定についてポイントをお話してきましたが、間違った方向に進んでしまうと「機能比較の樹海」に迷い込んでしまうため、お気を付けください。
実際に使用するエンドユーザを意識して順番も気にしながら選定していただくとスムーズに進むかもしれません。
また、実際に使用してみないとわからないことも多いので、初めからすべての要件を盛りだくさんにするのではなく、スモールスタートして不足している機能を組み合わせで追加していくというのもよいのではないでしょうか。

今回はレポートを中心にお話しましたが、見えない部分であるETL/DWH/モデル(データマート)の方が、奥が深く、構築・運用も大変になります。
レポートでBIツールを絞り込み、最終的にはETLなども加味した選択をしていただくのがよいのではないかと思います。

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本製品の最大の特徴として、SAPデータベース上の特殊データを自動変換する機能や、SAPのデータベースを活用した差分転送機能があります。これらの機能を実現したことで日々のデータを適切に転送してレポートとして出力することができます。
テンプレートレポートも充実しており、導入時に需要に合わせてカスタマイズしたテンプレートを作成することも可能です。
また、自由分析機能を備えたツールもご用意しておりますので、より多角的な分析もサポートすることができます。

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BusinessSPECTREご紹介ページ:https://erp.isid.co.jp/solution/sap-bi-businessspectre