製造業のSAPユーザが多段階引当を加味した納期算出するには?(vol.62)

2022.2.7

製造業のSAP ERP*ユーザの皆さまは、製品あるいは中間品の製造納期について、どれほど正確に算出/管理できていらっしゃるでしょうか?
また、突発的な事象により発生する納期変更に対し、どの受注/どの製造品へ影響する可能性があるのかを、どのように調査して製造指示へ反映されていらっしゃるでしょうか?

例えば、個別受注生産(ETO)や繰り返し受注生産(MTO)の形態では、すべての手配が受注に紐付いており、中間品や部品の使用先が明白であるため、比較的容易に納期変更の影響を確認することが可能です。
しかし、受注組立(ATO)や受注加工組立(BTO)のように、中間品を見込み生産しておく場合は、手配ごとの引当状況を確認する必要があるため、特に多段階の引当を伴う品目の影響確認には多大な労力を要します。
そのため、SAP ERPのMRP(Manufacturing Resource Planning)の結果を参照されるかと思いますが、MRPでは考慮できない観点もあるため、SAP ERP外で影響調査をされているケースが多々見受けられます。

本ブログでは、製造業のSAP ERPユーザが納期変更の影響を確認する上で、特に多段階の引当を伴う品目の納期を可視化するために考慮すべき勘所について解説します。

*本ブログの「SAP ERP」は、「SAP ERP」および「SAP S/4HANA」を指します。

製造業のSAPユーザが考慮すべき納期算出の勘所 ①MRPの特徴

製品あるいは中間品の製造納期を正確に算出するには、まずはMRPの特徴を捉える必要があります。以下の図をご覧ください。

【図1】は、横軸を時間軸、製品のフォーキャストとその部品手配の状況を示したものです。
現在、[製品X]の[フォーキャスト01]が[品目X]の在庫を使用予定です。さらに、[製品X]の[フォーキャスト02]が、[品目X]の製造指図やその下位部品の手配を使用予定となっています。

【図1】

 

【図1】の状況から、[フォーキャスト02]の納期より後日程に受注が入ったとします。
[フォーキャスト01]は受注が入ることで消化され、[フォーキャスト02]が製品Xの在庫を使用予定となります。さらに[品目X]の製造指図やその下位部品は、受注に使用されることになります。【図2】はその状況を示したものです。

【図2】

 

上述のような状況において、本来[品目X]と下位部品が「本当に必要なタイミング」は、赤点線となるはずです。

【図1】、【図2】で表現されている製造指図と購買発注が、全て確定前である計画手配、購買依頼の状態であれば、MRPにて再度計画されることになるため、赤点線をわざわざ認識しなくともMRPの結果が正となります。
しかし【図1】、【図2】のように全て確定された状況ですと、MRPにより製造指図や購買発注の納期が動くことはないため、上記の事象が発生することになります。つまり赤点線を考慮する必要性が生じます。
また、MRPは直下の品目の納期しか加味しません。仮に下位部品である[品目a]、[品目b]が未確定であったとしても、[品目X]が確定されていると同じ結果となります。

製造リードタイムが長い製品や、受注変更が頻繁に発生するケースにおいては、確定した後でも「本当に必要なタイミング」を算出した上で、場合によっては現場への製造指示に反映する必要が生じます。
また構成階層が深ければ深いほど、構成する品目が多ければ多いほど、加味すべき手配が増えるため、「本当に必要なタイミング」を算出することは困難になります。

製造業のSAPユーザが考慮すべき納期算出の勘所 ②優先手配が存在するケース

実際の製造納期を算出する場合、通常MRPでは考慮されない要素を加味する必要があります。例えば重要顧客からの受注に対して、優先的に手配を行いたいといったケースです。以下の図をご覧ください。

【図3】は前述と同じく、横軸を時間軸、製品のフォーキャストとその部品手配の状況を示したものです。[製品X]の[フォーキャスト01]、 [フォーキャスト02]の引当も前述の通りだとします。

【図3】

 

この時【図3】の[フォーキャスト02]が重要顧客からのフォーキャストであったため、[品目X]の在庫を使用することになったとします。その影響を受け、[品目X]の製造指図やその下位部品は、[フォーキャスト01]に使用されることになります。【図4】はその状況を示したものです。

【図4】

 

上述のような状況において、本来[品目X]と下位部品が「本当に必要なタイミング」は、赤点線となるはずです。つまりMRPで算出された[品目X]やその下位部品の納期だと間に合わず、前倒す必要があります。

このような手配に対する優先順位は、SAP ERPに限らず一般的な生産管理システムのMRPでも考慮されることは少なく、部品を使用して初めて他の手配の納期遅れや欠品に気付く場合があります
こうした優先手配を考慮した上での「本当に必要なタイミング」を、日ごろから認識しておく必要があると考えています。

製造業のSAPユーザが考慮すべき納期算出の勘所 ③生産計画のシミュレーション

ここまでは実際の製造納期を算出するために考慮すべき点を解説しました。
より実情に近い納期を算出し、生産計画/製造指示へ反映するにあたり、まずは机上にて各手配に対する影響を確認する必要があります。
しかしながら、部品表の特性や生産量によっても異なりますが、生産に関わるデータは数百万レコードから数千万レコードになる場合もあり、人間がツールを利用せず算出することは現実的ではなく、日々変わる状況に対応した生産計画の変動に追従することができません。

SAP ERPに限らず一般的な生産管理システムのMRPは、シミュレーション機能を有していないこともあり、突発的な重要顧客からの要請や、設備停止に伴う納期変更の影響確認が難しいケースがあります
そのような事態に備えるため、生産計画のシミュレーションを行える仕組みの検討が必要です。

製造業のSAPユーザが考慮すべき納期算出の勘所 まとめ

今回は、製造業のSAP ERPユーザが多段階引当を加味した、納期を算出するための勘所について解説しました。事前に認識しておくべきことをまとめると以下の3つです。

  • MRPでは「本当に必要なタイミング」と異なる納期で算出されるケースがあることを理解する。
  • 手配に優先順位がある場合、一般的な生産管理システムでは考慮されないことを理解する。
  • 納期変更の影響を確認するためには、生産計画のシミュレーションが重要であることを理解する。

製造業のSAP ERPユーザと言っても、製品の特性やリードタイム、部品構成の複雑さ、受注や製造指図が確定するまでの期間など、様々な要因から抱える課題は異なります。
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