SAP にEhP適用するには?(vol.79)

2022.8.1

SAP S/4HANAへ移行したいが、移行に掛かる多大な費用に対して、投資に見合った十分な恩恵を享受できるストーリーが描けず、経営層を説得できない。しかし、SAP S/4HANA以外の基幹システムに切り替えるのは、オペレーション変更による負荷を懸念したユーザ部門からの反発や、自社業務に合わせた追加開発に掛かる費用などを考えるとさらにハードルが高い……」
このような背景から、SAP S/4HANA移行までのストーリー策定や、投資対効果を鑑みた十分な検討を実施する期間が十分に確保できるよう、まず当面の対応として、SAP ERPの標準保守を2027年まで延長したい、という声をよく耳にします。

そこで本ブログでは、SAP ERPを2027年まで延長するための前提条件となっているSAP ERPへのEhP適用について解説します

SAP EhPとは?

EhPとは、Enhancement Packageの略称であり、SAP ERP Central Component (以下、ECC)6.0のユーザーに継続的に提供される機能拡張パッケージです。
例えば、各国の法改正に伴う機能追加や標準機能の不具合解消などが該当します。
不具合修正・セキュリティパッチなどが含まれるSAP NoteやSAP Noteの集合体であるSPS(Support Package Stack)は、インストール時に強制適用されますが、EhPは有効化して初めて新機能が利用できます。(Business Function単位で有効化)

また、特にEhP適用で考慮する必要があるのが、使用している標準プログラムやアドオンプログラムへの影響です。EhPにはアプリケーションに影響を及ぼす機能変更が含まれている可能性が高く、(ターゲットバージョンによってボリュームは変動しますが)ほとんどのEhPアップグレードプロジェクトにおいて、標準プログラムへの修正適用やアドオンプログラム修正などの対応を実施する必要があります。

なぜSAP EhP適用が必要なのか?

2025年以降もメインストリームサポートを受けるためには、2025年末までにEhP6以上が適用されている事が条件になります。

また、EhP6以上であれば、メインストリームサポート終了後の2028年以降でも、SAPへ申し込みを行えば、2030年まで延長保守サービスを利用可能です。
なお、延長保守サービスを利用するには、現行の保守基準料金に2%の追加料金が加算されます。

もし、ご利用中のSAP ECC6.0のEhPのバージョンを確認したい場合は、以下URLのブログ記事をご覧ください。
 https://erp.isid.co.jp/blog/ecc-vol-42/

SAP EhP適用に必要な作業とは?

EhPバージョンアップには、主に次のような工程が必要です。

Step1:修正対象の洗い出し
Step2:修正対応(標準プログラムの修正適用、アドオンプログラム修正、権限調整など)
Step3:稼働確認・単体テスト
Step4:ユーザ部門による受入テスト

社内のリソースだけで安易に実施できるものではなく、いずれも十分な計画が必要となります。
すべて重要な工程ですが、特にStep1とStep4が重要な工程となります。
「Step1:修正対象の洗い出し」が十分でないと、後続タスクにおいて作業手戻りによるコスト増のリスクが非常に大きくなります。

Step1からStep3までの工程は、対象となるSAPモジュールの技術的な知見はもちろん、EhP適用に関して十分に経験を積んだSAPコンサルタントにて実施する必要があります。
ただし、十分に経験を積んだSAPコンサルタントであっても、EhP適用による修正対象の洗い出しを漏れなく行うのは困難を極めます。

Step1及びStep2を漏れなく実施するためには、解析ツールを用いるのが最も効果的です。
弊社ISIDが販売代理店としてご提供している、影響分析ソリューションPanayaを使用する事でStep1及びStep2のコストを大幅に削減する事が可能です。
影響分析ソリューションPanayaを使用する事で、ユーザが利用しているすべての機能(標準機能+アドオンプログラム)に対して、EhP適用に伴う修正が必要かどうかを分析できます。修正が必要な場合、その対象件数や修正内容(コーディングの変更、Note適用、モディフィケーション調整、権限修正など)、各機能に対するユーザの使用頻度、それらから導き出せる対応優先度などを見える化する事ができます。
修正が必要で使用頻度が高い機能に対しては、単体テスト/結合テスト/受入テストを実施する要員を十分に確保して備え、修正が必要でも使用頻度が低い(あるいは使用していない)機能に対しては、エラーなく稼働する事だけを確認する方針とし、効率的にリソースを配分する、といった柔軟な対応が可能となります。

最後に、最も重要な「Step4:ユーザ部門による受入テスト」の工程ですが、たとえStep1からStep3の工程で大部分のエラーが解消されていたとしても、ユーザ部門による本稼働運用を想定した受入テストを十分な期間を掛けて実施していないと、本番リリース後に多くの問題が発生するリスクが高くなります。
「Step4:ユーザ部門による受入テスト」で想定される主な障害として、次のような例が挙げられます。

  1. Note適用漏れ
  2. SAPクエリ生成漏れ
  3. モディフィケーション調整の対応漏れ
  4. SAPデータの内部ソート順序変更
  5. EhPアップグレードに伴うSAP標準仕様変更・追加
  6. EhPアップグレードに伴うSAP標準不具合解消

1~3については、Step1からStep3の工程で十分に経験を積んだSAPコンサルが、Panayaなどの解析ツールを用いて効率的に対応を実施することで極小化する事ができますが、プロジェクトスケジュールの制約などによりテストスコープを頻繁に実施する運用のみに絞った場合など、月次処理や年次処理などのオペレーションがテスト対象から漏れていると、対応が漏れてエラーとなるケースが想定されます。

4~6は、いずれもEhP適用に伴うSAP標準ロジック変更のため、実行時エラーの解消を目的としているStep3の稼働確認テストや単体テストで気づき難い課題です。

4については、EhP適用により、現行システムのアドオンプログラムでは想定通りの結果となっていたはずが、内部データのソート順序が変更されたことにより、想定外の結果となるケースが起こる可能性があります。

5~6については、「EhP適用によりSAP標準機能にチェックロジックが追加になった」、「EhP0では標準機能の不具合だった処理が、EhP適用によってその不具合が解消された」ことにより、プログラムの動きが変わって想定外の結果となる可能性もあります。

重要なことは、4~6のケースを想定して、実行時エラーだけではなく、画面項目(バリアント含む)の現新差異も含めて“ユーザ目線で”EhP適用後もEhP適用前の運用が行えるかを十分にテストする必要があるという事です。ユーザ部門を巻き込んだ、実業務を想定したテストを早期に計画し、社内へ周知する活動を実施してください。

まとめ

SAP S/4HANA移行のような大規模な投資となると、十分な検討期間が必要となります。
SAP S/4HANAへの移行対応を引き延ばすことで、市場での開発リソースの不足などが懸念されますが、安易に決定せず、経営戦略やIT戦略から落とし込んだITロードマップのような将来構想や、SAP S/4HANA化による自社のメリットを十分に検討した上で、進むべき方向性を決定する事が重要と考えます。

弊社ISIDは、Panayaという、EhP適用時の影響分析ツールを活用した効率的なプロジェクトの推進が可能です。
*以下URLより、「SPS/EhPアップグレードサービス」の概要を説明した動画をご覧いただけます。
 https://erp.isid.co.jp/solution/sps-ehp-upgrade/

「2025年以降も現行のSAP ECC6.0を継続利用したいから、EhP適用を検討しなければならないけど、いくらくらいかかるの?どの程度のプロジェクトスケジュールなの?」とお悩みの場合は、是非、ISIDへお声掛けいただけますと幸いです。
 https://erp.isid.co.jp/inquiry/