SAP エンジニアが不足中! S/4HANA移行検討中の企業はどう立ち向かうべきか(vol.33)

2021.6.22

SAP ERP Central Component6.0(以下、ECC6.0)のメインストリームサポート終了が2027年に迫る一方、SAP S/4HANAの導入に必要なスキルを要するITエンジニア(SAPエンジニア、SAPコンサルタント)は不足しているのが実状です。

そこで今回は、SAP S/4HANAへの移行を検討している企業向けに、エンジニア不足の実態を明確に捉え、どのように対処していく必要があるかを解説していきます。
※SAP認定コンサルタント資格を有するエンジニアを、一般的に「SAPコンサルタント」と言います。今回の記事では、SAP認定資格の有無に関わらず、SAP S/4HANA導入に必要な知識を有するITエンジニアを対象としております。

SAP エンジニア (SE) 不足の現状

SAP移行を検討している企業にとって、いつ移行をするかは重要なポイントです。
SAPユーザー企業からは「メインストリームメンテナンス期限ギリギリまで現用のECC6.0を使い倒したい」というご要望をよく耳にしますが、同時に、SAPベンダーからは「SAPエンジニア不足が年々深刻化しているため、ギリギリでの移行となるとリソースが足らなくなる恐れがある」という話も耳にします。
SAPベンダーのみならず、SAPジャパン株式会社 常務執行役員である大我猛氏も2019年時点で「当社の試算ではパートナー企業に所属するコンサルタントが千人単位で足りず、今後さらに不足している人数は増えていくだろう」と発言しており、市場全体で大きな課題となっています。

SAP社のERP製品は、2018年のガートナー社の「Market Share Analysis : ERP Software Worldwide 2018(2018年のERPソフトウェア世界市場シェア分析)」レポートにおいて2年連続1位という成果を出していますが、上記の通り、エンジニアの育成が追いついていないという問題も生じています。
こうした状況を打破すべく、SAPジャパンが打ち出したのが「パートナーサクセスプログラム」です。
これにより、コンサルタントの増加と、パートナーが手がけるプロジェクトの質の向上を目指しています。

SAP エンジニア不足要因①2027年問題

前述の通り、エンジニア不足が深刻化していますが、その原因1つが「2027年問題」です。
これは、ECC6.0のメインストリームサポートが2027年に終了することに伴い、ECC6.0を導入している企業がERPシステムの移行対応を実施しなければならなくなったことを指します。
これにより、SAP社の新たな製品SAP S/4 HANAへの移行案件が増加し、対応できるSAPコンサルタントが不足しているのです。

2027年を過ぎてもECC6.0を継続利用することはできますが、

  • 延長保守を適用する場合:最長2030年末まで保守延長が可能だが追加保守料を支払う必要がある(現行の保守基準料金に2%の追加料金がかかる)
  • 保守を解約する場合:保守解約した時点から新たに発行される修正プログラム等のサポートを享受できなくなるため、障害や法制度対応に対するリスクが高まる

等のデメリットがあげられます。

しかし、SAP S/4HANAへの移行を検討するにおいても、以下の制約事項を加味する必要があります。

  • SAP S/4HANAに関する知識や高度なスキルが求められる
  • 現用のECC6.0からどのような移行パスを選択するのがベストかを判断するための適切な検討材料を提供してくれる
    SAPベンダー(エンジニアの質)が重要となる
  • 2027年までという限られた期間で移行を行わなくてはならない
    (EhP6未満の場合は2025年までに移行しなければならない)

またSAPユーザー同士で優秀なSAPベンダー(エンジニア)の取り合いになるため、必要なタイミングで必要なエンジニア数を確保できるかは保証の限りではありません。
2027年問題により、SAPエンジニア不足も問題視されており、SAP製品以外のERPパッケージへの移行を検討される企業も存在します。
(もちろん、SAP S/4HANAへの移行が第一の選択肢であることに変わりなく、きちんと移行検討を進める必要があります)

SAP エンジニア不足要因②専門的なコード/言語知見の必要性

SAPエンジニアには、一般的なオープンシステムと大きく異なりトランザクションコードに関する知識が必要です。
トランザクションコードは、SAPの処理画面(プログラム)を呼び出す文字列や数列のことで、特別な用語や慣れない画面での操作など、このスキルを満たすことは一般のエンジニアでは厳しく、その数は限られます。
さらに、トランザクションコードは導入時にベンダー側が利用するものだけでなく、平時の運用においてユーザー側が利用するコードにも精通していなければならないため、対応できる人材はますます限定されます。

さらに、SAPエンジニアは、SAPシステムの開発でのみ使われる独自のプログラミング言語:Advanced Business Application Programming(以下、ABAP:アバップ)の習得が必要となるため、人材育成のハードルも高くなります。

日本企業は日本独自の商習慣や自社独自の業務プロセスを損なわないよう、SAP ERPの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせてシステムを追加開発する傾向が多くみられます。
SAPでは、標準機能だけでは実現できない顧客要件を、個別に開発して機能追加することをアドオン開発と言います。このアドオン開発において使用されるのがABAPです。

SAP S/4HANAへの移行においてネックとなるのが、このアドオンプログラムです。
「多大な工数/費用をかけて作り上げたアドオンを捨て去るのはもったいない」、「SAP S/4HANAへ移行後も既存のアドオンは使用したい」と言った場合、アドオンプログラムの移行可否を調査/検証し、必要に応じて改修する必要があります。
ABAPによるアドオン開発やメンテナンス、SAP S/4HANA移行に向けたアドオン改修対応に多大な工数を必要とすることも、SAPエンジニア不足の原因となります。

SAP エンジニア不足の打開策①アドオンをABAP以外で再構築

ユーザー企業の取りうる最も簡易な対応としては、SAPベンダー・ロックインの排除が挙げられます。既存ベンダーの技術者リソースが不足しているのであれば、その他のベンダーを頼るほかありません。
ベンダー・ロックインのリスクを避けるには、

  • AIなどデジタルテクノロジーの実装や運用はできる限り自社で賄えるようにする
  • 主体的に取り組めるようIT人材の底上げや他部門との協力を強化する

といったことが挙げられます。

しかし、SAPエンジニアは市場全体で不足しているため、目ぼしいSAPベンダーはどこも人手不足の可能性が高いです。

そこで、根本的なSAPエンジニア不足の打開策として、アドオンをABAP以外で再構築し、SAPエンジニアでなくてもSAP周辺システムの追加開発やメンテナンスを可能とするという方針が挙げられます。
具体的には、以下の2つの方法があります。

  1. SAP Business Technology Platform(以下、SAP BTP)を使用した開発
    SAP BTPとは、SAPオンプレミス製品やクラウド製品の機能拡張を行う開発ツールやSAP Intelligent Robotic Process Automation(以下iRPA)、Workflowなどのツールおよびクラウド上の実行環境を備えたPaaS型のクラウドサービスです。
    SAP BTPは、拡張やアドオン開発を強力に支援するための統合開発環境を提供しています。

    このSAP BTPを使用した開発手法として、Side by Side 拡張があります。
    Side by Side 拡張は、SAP S/4HANAの外側でアプリケーション開発を行う方法であり、JavaScriptなどのオープンな世界で開発ができる(eclipse+WEB IDEによる外部環境でのアプリケーション開発が可能な)ため、ABAPを習得したSAPエンジニアでなくともアプリケーション開発が可能となります。

  2. ローコードプラットフォームを使用した開発
    ローコードプラットフォームとは、コーディングではなく、ビジュアルモデリングによりプログラム開発を実現するものです。
    システムは通常、コードと呼ばれるプログラムを専用の言語を使って記述していくことによって作られます。
    このコードをほとんど必要としないシステム開発がローコード開発です。
    キャンパスにドラッグ&ドロップによって画面のパーツを配置し、処理の流れを作り、簡単なテキスト入力で、システムを正しく動作させます。プログラム言語の知識は不要です。

    ローコードプラットフォームには、開発短縮に特価したツールと運用保守の最適化/効率化を含めて、システムのライフサイクル全般を管理するツールが包含されています。
    これにより、一般的なシステムの開発の設計からプログラミング、単体テストまでの工程を大幅に短縮できるのです。

    このローコードプラットフォームにより既存のアドオンプログラム(例えば、周辺システムとのインターフェースなど)を再構築することで、SAPエンジニアを必要とせず、それどころか、ベンダーに頼らずとも自社メンテナンスが可能となります。

    ※ISIDは、ローコードプラットフォーム:OutSystemsをご提供しております。
     OutSystemsは、SAP ERPのテーブルやAPIの情報を持ち、SAP ERPとの連携が容易なローコードプラットフォームです。
    (ご参考URL:https://erp.isid.co.jp/solution/outsystems

このように、ABAPで開発した従来のアドオンをこれらのツールで再構築することにより、SAPエンジニア以外でも開発/メンテナンスを可能とするほか、ABAP依存脱却による開発コストの低下やベンダー・ロックイン脱却による技術リソースの適切な調達が期待できます。

SAP エンジニア不足の打開策②Fit to StandardでSAP S/4HANAを再導入

SAP S/4HANA移行に向けたSAPエンジニア不足の打開策として、追加開発を極小化したFit to StandardによるSAP S/4HANA再導入が挙げられます。
Fit to Standardとは、ERPシステムの標準機能に業務を合わせてシステム導入する手法のことです。

SAP S/4HANAは、様々なお客様で標準的に利用される管理項目・業務処理をブロック化(組織・データ・機能など)しており、25業種分、数万を超える業務ブロックをベストプラクティスとして保有しています。
このベストプラクティスを組み合わせることで、各業界で必要とされる業務プロセスは概ね標準機能で賄えるとの評価が世界的になされています。
諸外国ではSAPシステムの標準機能に業務を合わせることが一般的ですが、先述の通り、多くの日本企業は日本独自の商習慣や自社独自の業務プロセスを損なわないよう、業務に合わせてシステムを追加開発する傾向があります。
このため、業務が拡大するごとに追加開発が重なり、肥大化したアドオンのメンテナンスにもSAPエンジニアの工数が必要となるため、エンジニア不足に陥っています。

Fit to StandardでSAP S/4HANA再導入をすることで、
「追加開発するプログラム自体が少なければ開発やメンテナンスの工数も最低限で済む」=「SAPエンジニアのリソース消費も最低限になる」となるのは自明の理ですね。
もちろん、Fit to Standardはあくまで手段であり目的ではないので、標準機能のみで業務をカバーすることが難しければ、上記のSAP BTPやローコードプラットフォームを活用することで柔軟に対応しましょう。

まとめ

SAP S/4HANA移行に向けたSAPエンジニア不足に立ち向かうには、

  • 既存アドオンをABAP以外で再構築
  • Fit to StandardによるSAP S/4HANA再導入

といったアプローチがあります。

ISIDは、ローコードプラットフォーム:OutSystemsをご提供しております。
(ご参考URL:https://erp.isid.co.jp/solution/outsystems

しかし、SAP S/4HANAへの移行に際しては、上記アプローチのみならず、既存ECC6.0環境の調査/棚卸やSAP S/4HANAを深く理解しているSAPベンダー(SAPエンジニア)の存在は必要不可欠となります。
ISIDでは、SAP S/4HANAへの移行ノウハウが豊富なSAPエンジニアによる「SAP S/4HANA移行トータル支援サービス」をご提供しています。
SAPエンジニア不足にお悩みの方は、是非、ISIDへお声掛けください。

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本記事は2021年5月17日時点の情報を基に作成しています。製品・サービスに関する詳しいお問い合わせは、各製品・サービスベンダーのサイトからお問い合わせください。