SAP S/4HANA移行のメリットとは?(vol.74)

2022.6.20

SAP S/4HANAへの移行を検討するに当たって、SAPユーザから「どのようなメリットがあるか教えてほしい」という話を耳にすることが多くなっています。また、SAP S/4HANAへの移行検討にあたり、元々高機能だったSAP ERPが更に高機能になったが故に、SAP S/4HANAの機能ばかりがフォーカスされてしまい、本来のシステム更改で考えるべきことが抜け落ちてしまうことが懸念されます。

そこで本ブログでは、SAP S/4HANA移行のメリットをどのように検討していくべきか、具体例を交えて解説します。

そもそもSAP S/4HANA移行とは?

そもそも、昨今話題となっているSAP S/4HANA移行とは、SAP ERP Central Component(以下、ECC)6.0のメインストリームサポート終了が2027年末に迫っているため、新たなスイート製品であるSAP S/4HANAに移行する必要がある、ということが契機となっています。もちろんSAP S/4HANA以外のシステムにリプレースすることも選択肢の1つではありますが、その場合もSAP S/4HANAに移行することのメリット/デメリットを検討した上で決定することになるかと思います。

若干話は逸れますが、SAP S/4HANA移行の際に必ず検討することの1つに移行方式があります。移行方式には、リビルド(グリーンフィールド)、コンバージョン(ブラウンフィールド)、選択データ移行の3種類があり、それぞれメリット、デメリットがあります。ただ、移行方式はあくまでも手段の話で、SAP S/4HANAへの移行が決定した後に検討するテーマであり、SAP S/4HANA移行そのもののメリットとは切り離して考える必要があります。

SAP S/4HANA移行のメリットを考える前に

メインストリームサポート終了という外的要因を起因としてシステムを更改せざるを得ないとすると、どうしても現行機能に基づいたSAP S/4HANA移行という観点だけがフォーカスされてしまいますが、本来システムの更改は、各企業のビジョンや経営目標/経営戦略から、事業戦略/IT戦略、事業課題/IT課題、業務施策/IT施策とブレイクダウンされていった結果、ITロードマップのような構想が策定され、それに基づいて計画/実行されるというのがあるべき姿ではないでしょうか。

SAP S/4HANA移行を単体のIT施策で考えた場合、現行のSAP ECCで業務が問題なく遂行できているのであれば、コストをかけてまでSAP S/4HANAに移行する必要性は見い出せないでしょう。しかし、現行業務の課題解決や、将来的なIT施策も含めた中長期的な視点を持つことができれば、SAP S/4HANAに移行するメリットが十分に挙げられるものと考えます。

SAP S/4HANA移行のメリットを考える

正直なところ、ベンダー側がSAPユーザー企業の経営戦略や事業課題、ITロードマップなどを知らなかったり、その真意を理解できていないケースにおいては、SAP S/4HANAの新機能の説明はできても、それぞれの企業にとってSAP S/4HANAへ移行するとどんなメリットがあるのかを提示するのは非常に難しいと言えます。そのような状況下でも検討可能な要素を、少し想像を膨らませて2つほど具体例を交えて考えていきたいと思います。

  1. 入金マッチング
    入金マッチングは、SAP S/4HANAを語る際によく話題になる新機能で、過去の債権明細と入金消込履歴をもとにマッチング条件を学習し、新規入金に対して消込候補となる債権をレコメンドしてくれるソリューションです。機械学習を活用した高機能なソリューションですが、すでに銀行のサービスであるバーチャル口座を使って入金マッチングを実施している企業や、コンシューマー向けビジネスにおいて債権・入金管理を別システムで行っている企業にとっては、メリットを感じられないソリューションかと思います。

    一方で、会社の規模が拡大する中で債権/入金管理の負荷が高まっている企業や、新規ビジネスを展開する上で債権/入金管理を効率的にしておきたい企業にとっては、
    ・データの利活用・デジタル技術の活用・業務改革の推進といったDX推進
    ・労働時間と人件費の削減・業務プロセス改善といった働き方改革
    ・業務の自動化による現行業務の課題解決

    といった事業課題の解決、経営戦略の実現の一助に成り得るソリューションであると考えます。

  2. モバイル対応
    今更「モバイル」の話で恐縮ですが、意外とSAP S/4HANA移行メリットの根幹になるかもしれません。
    SAP S/4HANA移行においてモバイル対応と言うと、最初にFiori Launch Padと呼ばれるブラウザベースのメニュー画面からアクセスできる点が挙げられます。タブレット端末などでも使用できることがメリットとして挙げられますが、正直モバイルPCで十分なのでそれほどメリットはないかと思います。しかし、ブラウザベースのメニュー画面とすることで、SAP GUIと呼ばれるクライアントソフトの管理/配布から開放されることは多少メリットに感じられるのではないでしょうか。実際には情報システム部門の運用保守メンバーなどはSAP GUIを継続使用することになりますが、エンドユーザー向けのクライアントソフト管理が減ることは業務効率化/業務プロセス改善に繋がると思います。

    また、SAP S/4HANAのモバイル対応によりODataサービスと呼ばれるWeb APIが活用できるようになり、他のSAPソリューションとの連携はもちろんのこと、数多く提供されているサードパーティーソリューションやマイクロサービスとの連携が可能となります。

    つまり、SAP S/4HANAのモバイル対応は、
    ・業務効率化/業務プロセス改善といった働き方改革
    ・自社のDX基盤の構築や、新しいビジネスモデルにスピーディに追従したり、新たな価値創造といったDX推進

    にも繋がると考えられます。

これらのように直近の業務課題を解決したり、将来的に様々なソリューション/サービスを活用できるようになることがSAP S/4HANA移行のメリットであり、そのメリットはお客様それぞれの戦略/課題に対応するものだと考えております。

まとめ

ビジネスがシステムの制約を受け、且つ、様々なソリューションやサービスが世に溢れている現在、1つのソリューション/サービスだけでシステム投資を判断できるようなキラーソリューション/サービスはほとんどないと考えております。SAP S/4HANA移行を語る際によく話題に挙がるソリューションがどんなに高機能であっても、それ単体ではシステム投資の判断はできないでしょう。ただし、経営戦略やIT戦略から落とし込んだITロードマップのような将来構想と、SAP S/4HANAやSAP関連ソリューションを紐付けていくことにより、SAP S/4HANA移行のメリットは十分考えられると思います。

弊社ISIDでは、SAP ECCユーザー企業のSAP 移行を推進すべく、「SAP S/4HANA移行簡易IT戦略策定サービス」をご提供しております。SAP S/4HANAへ移行するメリットを十分に検討したい、経営戦略や事業課題とSAPソリューションをつなげてSAP S/4HANA移行の道筋を見出したいといったご要望がございましたら、是非、ISIDまでお問い合わせください。

https://erp.isid.co.jp/inquiry/