SAP R/3 から S/4HANA へ ~ERPの”これまで”と”これから”~(vol.46)

2021.9.28

SAP製品で最も親しまれている呼称は、やはり「SAP R/3」だと思います。
その後、「SAP R/3」は進化を遂げ、様々な業種業態で標準的に利用される管理項目/業務プロセスをブロック化したベストプラクティスや最新のテクノロジーを集結した次世代のERPである「SAP S/4HANA」へと至りました。
本ブログでは、SAP製ERPの歴史=“これまで”を振り返るとともに、“これから”のERPの行く末と、最新バージョンであるSAP S/4HANAに至るまでの道筋について解説します。

SAP R/3 とは? ~ERPの“これまで”を振り返ろう~

SAP製品で最も親しまれている呼び名はSAP R/3だと思いますが、実は2004年以降にリリースされた製品からは、このR/3という名称は使用されておりません。
従来のSAP R/3に相当する製品名称として、現在はSAP ERP Central Component(以下、ECC)があり、こちらは条件付きで2027年末までメインストリームサポートを受けられます。
そのECCの後継製品は、SAP S/4HANAです。

<SAP製品の歴史>

販売開始年 製品名 製品概要
1972年 SAP R/1 メインフレームで動作する会計システム。
(Rは”Real-time data processing”の頭文字を意味する)
1979年 SAP R/2 メインフレームで動作し、欧州の多国籍企業向けに複数の通貨/言語に対応した、リアルタイムで使えるビジネス・アプリケーション・パッケージ製品。
1992年 SAP R/3 WindowsやUNIXなど様々なプラットフォームで動作するクライアント・サーバ型のERPパッケージ製品。
2015年 SAP S/4HANA SAP独自のインメモリデータベース:SAP HANAを基盤とし、AI/機械学習/高度なアナリティクスなどのインテリジェントテクノロジーを組み込んだ完全なERPシステム。
(SAP S/4HANAはSAP Business Suite for HANAの略であり、SはSimpleを、4は第4世代を意味する)

SAP R/3 が辿り着いた先とは? ~“これから”のERPとは~

前章で述べた変遷を辿りながら、SAP R/3は、現在、SAP S/4HANAへと至りました。
では、SAP S/4HANAの目指す姿はいったいどのようなものなのでしょうか?
ここで、SAPの次世代ERP戦略について、軽く触れさせていただきます。

AI、マシンラーニング、IoT、ビッグデータ、アナリティクス、ブロックチェーンなどのテクノロジーの進歩により、現在、画像認識技術の正確性は約97%、音声認識技術の正確性は94.1%となり、人間の音声認識率よりも高い水準を誇っています。また、人が行っている作業は、2025年までに60%が自動化されると予想されています。
そのため、ERPは“これまで”の業務ユーザが意思決定をするための情報提供をする役割から、“これから”は単純作業等のルール化できる業務上の意思決定を部分的に代替して行う役割へと進化し、その分より高度で付加価値の高い業務を人間が行えるようにインテリジェント化していく必要があると考えています。

現在、世界のシステムトランザクションの77%がSAPシステムを介していると言われ、その業種や業界も多岐にわたります。
これらのデータを活用し、お客様の企業競争力向上に貢献すべく、SAPは、最新のデジタルテクノロジーを取り入れて進化を遂げる「インテリジェントエンタープライズ」を提唱し、さらなるデータドリブンビジネスの実現を支援しています。
SAP S/4HANAは、従来のR/3や他のERPとは一線を画す次世代のインテリジェントERPへと進化を遂げており、このSAP S/4HANAをプラットフォームに、マシンラーニング・AI・IoT・ブロックチェーンなどのデジタルテクノロジーを活用することで「インテリジェントエンタープライズ」を実現する、というのがSAPの次世代ERP戦略です。

<SAPの次世代ERP戦略 まとめ>

  • テクノロジーの進歩に伴い、ERPの担うべき役割は、
    “業務ユーザが意思決定をするための情報提供をする役割“から、
    ”業務上の意思決定を部分的に代替して行う役割”へと進化し、
    より高度で付加価値の高い業務を人間が行えるようにインテリジェント化していく。
  • SAPは、最新のデジタルテクノロジーを取り入れて進化を遂げる「インテリジェントエンタープライズ」を提唱し、
    さらなるデータドリブンビジネスの実現を支援していく。

SAPは、デジタルテクノロジーを活用し、標準化された業務プロセスを自動化することを得意としています。
SAP S/4HANAをプラットフォームとしてデジタルテクノロジーを組み合わせたSAPソリューションの具体例は、以下の通りです。

<デジタルテクノロジーを活用したSAPソリューション(例)>
・ SAP Cash Application:入金消込の自動化を促進
・ Contract Consumption:調達契約の消化具合を予測することで、事前の契約更改を実現
・ Stock in Transit:在庫転送の遅延状況を予測することで、生産のリスクを回避
・ Remittance Advice Extractor:非構造化文書から支払いに関する情報を抽出し、決済プロセスを自動化
・ SAP Business Integrity Screening:予測分析の利用により不正に対するアラートの精度を向上
・ SAP Predictive Maintenance:計画外の設備ダウンタイムを回避し、保守コストを削減

これらのソリューションにより、SAPはパッケージ化されたイノベーション活用によるコア業務の高度化を実現します。

※ERP導入の「目的」と、その実現に向けた「計画」作りをご検討の場合は、「SAP ERP導入の原点を考える ~なぜSAP S/4HANAなのか?~(vol.22)」をご覧ください。

SAP R/3 からS/4HANAへ ~どうやって移行するの?~

前述の通り、従来のSAP R/3に相当する製品名称として、現在はSAP ECCが該当します。
このECCからSAP S/4HANAへの移行方式は下記3つの選択肢があります。
①ブラウンフィールド(コンバージョン)
 現用のECC6.0の“設定・アドオンプログラム・データをそのままSAP S/4HANAへ移行する方式”です。
※SAP R/3 4.6CなどからSAP S/4HANAへはコンバージョンはできません。
※SAP ECC6.0からSAP S/4HANAへはコンバージョン可能です。

②グリーンフィールド(リビルド)
 現用のシステムにとらわれず、ゼロベースで業務プロセスを見直し、
 “SAP S/4HANAを基盤とした新しいシステムとして再設計・再構築する方式”です。

③選択データ移行
 現用のECC6.0やその他ERPシステムの“任意のデータを選択してSAP S/4HANAへ移行する方式”です。

※ ①ブラウンフィールド(コンバージョン)と②グリーンフィールド(リビルド)の詳細解説については、「SAP おすすめの移行方法とは? ~3つの選択肢を解説~(vol.36)」をご覧ください。

※③選択データ移行の詳細解説については、「SAP 選択データ移行 とは?(Vol.45)」をご覧ください。

どの移行方式にすべきかを決めるためにも、まずはアセスメントを実施すべきです。
アセスメントを実施することで現行システムについて正確な情報を把握することが可能となり、SAP S/4HANA移行について根拠ある見積算出を行うことができるようになります。
SAP S/4HANA移行プロジェクトを効率的に、トラブルなく計画通りに進めるために、アセスメントは実施すべきであると考えます。

※SAP S/4HANA移行アセスメントを実施すべき理由と実施すべきアセスメント内容については、「SAP 移行 で検証すべきアセスメントとは?(vol.23)」をご覧ください。

まとめ

ここまでの内容をまとめます。

  • 2004年以降にリリースされた製品からは、SAP R/3という名称は使用されておらず、
    従来のSAP R/3に相当する製品名称はSAP ECCである。
  • そのSAP ECCの後継製品は、SAP S/4HANAである。
  • SAP社は、SAP S/4HANAをプラットフォームとしてデジタルテクノロジーを組み合わせたSAPソリューションにより、より高度で付加価値の高い業務を人間が行えるようにERPをインテリジェント化している。
  • SAP ECC6.0からSAP S/4HANAへの移行方式は、コンバージョン/リビルド/選択データ移行の3通りがある。
  • どの移行方式にせよ、まずはアセスメントを実施すべきである。

ISIDでは、SAPパートナー・パッケージ・ソリューションの承認を取得している「SAP S/4HANA移行トータル支援サービス」をご提供しております。
SAP S/4HANAへの確実な移行を支援するサービスであり、アセスメントから移行本番までのプロジェクトについてワンストップでご支援させていただきます。
SAP移行をご検討の際は、是非、ISIDへお声掛けください。
 https://erp.isid.co.jp/solution/sap-s4hana-assessment

本記事は、2021年9月28日時点の情報を基に作成しています。
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