SAP BW/4HANAとは? BWからの移行検討ポイントを解説(vol.2)

  • 公開日:2021.02.08

SAP ERP Central Component(以降、SAP ECCという)をご利用中の皆様は、メインストリームサポートが2027年末まで2年延長になったとは言え、SAP ECCにある情報システム資産の棚卸やアドオンの要/不要の整理、インフラのクラウド化など、検討事項が山積していて戦々恐々とされているのではないでしょうか?

本ブログ記事では、その中でも手が付けられていないと伺うことの多いSAP Business Warehouse(以降、SAP BWという)の移行対応について、後継製品であるSAP BW/4HANAの概要や移行検討のポイントを解説します。

SAP BW/4HANAとは?

SAP BW/4HANAは、複数システムから収集したデータを統合し、業務やビジネスプロセスをまたいだ分析を可能とする次世代のエンタープライズデータウェアハウス(DWH)です

2016年9月にリリースされたSAP BWの後継製品であり、インメモリDBであるSAP HANAをデータ管理基盤とすることで、クエリーの高速化、データロードの処理性能向上、物理キューブを必要としないシンプルなモデリングを実現しました。
ビジネスコンテンツという、主要な業務分野に対する事前定義の分析テンプレートを内包しており、これを活用したプロトタイピングとスパイラルアプローチにより、開発期間/コストを大幅に圧縮できます。
また、従来のSAP BWでは10種類のデータモデリング用のオブジェクトがありましたが、これを4つに削減することで、データの冗長性が極力排除された柔軟なデータモデルを設計できるようになりました。

データライフサイクル管理においても、利用頻度に応じて、Hot/Warm/Coldの3段階でデータを分類することで効率化されています。

  • Hot
    リアルタイム処理やリアルタイム分析のためのミッションクリティカルデータを保持するために利用される領域。データは常時インメモリ・ストアに保持されます。
  • Warm
    パフォーマンス要件を緩和したアクセス頻度の低いデータを保持するために利用される領域。
    データはより多くのデータを保持できる専用のインメモリノード(エクステンション・ノード)に保持されます。
  • Cold
    非常に大量のデータや非常にアクセス頻度が低いデータを保持するために利用される領域。
    データは外部ストレージ(SAP IQまたはHadoop)に保持されます。

UIについても、SAP GUIベースのものから、SAP HANA Studioに統合されたSAP BW/4HANA Modelling ToolsやHTML5ベースの管理者向けのSAP BW/4HANA Administrator Cockpitなどへ刷新されており、操作性も向上しています。

SAP BW/4HANAは、大量のデータを処理することに適しており、複数システムから収集したデータを多拠点横断の対前年実績推移等、ヒストリカル分析までを可能にします。

SAP BW/4HANAを使用するためには、①SAP BW/4HANAライセンス②SAP HANAライセンスが必要となります。

①SAP BW/4HANAライセンスメトリック
・ライセンスメトリックは SAP HANA メモリサイズ(1 ユニット =64GB)です
・最小で1ユニットから上限なく販売可能です
・販売ユニット数に応じて段階的に単価が下がる Tiered Pricingです

②SAP HANAライセンスメトリック
・SAP BW/4HANA と組み合わせ可能なフルユース版ライセンスはSAP HANA, enterprise editionです
・フルユース版のライセンスメトリックは SAP HANA メモリサイズ( 1 ユニット =64GB です)
・SAP BW/4HANA と組み合わせ可能なラインタイム版ライセンスは、
 SAP HANA, Runtime edition for Applications & SAP BW(通称 HANA REAB)です
・ラインタイム版はHSAV 15%がライセンス金額です
※使用するHANAライセンスが、フルユース版 or ランタイム版のどちらであるかに依存して、 SAP BW/4HANAのデータモデリングやデータエクスポートに関する制約が異なります
※詳細なライセンスメトリックについては割愛いたします

SAP BWやSAP BW/4HANAのサポート期限とは?

SAP BWをご利用中の場合、SAP S/4HANAへ移行する際に、SAP BWも移行することを検討しなければなりません。

SAP BWを移行する選択肢は大きく次の2つあります。
① SAP BWの後継製品であるSAP BW/4HANAに移行する
② SAP BWの利用をやめて、他のソリューションへ移行する

では、いつまでに移行する必要があるのでしょうか?
SAP BWのサポート期限はいつまでなのでしょうか?
また、移行先の選択肢として真っ先に考えられるSAP BW/4HANAですが、移行先対象とすべきバージョンは何なのでしょうか?

SAP BWの最新バージョンであるSAP NetWeaver 7.5のメインストリームサポート期限は2027年12月末までとなっています。こちらは、ECC6.0同様、追加のオプション料金を支払えば、さらに3年後の2030年12月末まで延長保守が可能です。
もし、バージョン7.0~7.4をご利用の場合、そのサポート期限は2020年12月であり、既にサポート期限が終了しているため、早急に7.5へのバージョンアップかSAP BW/4HANAへの移行が必要です。
*ご利用中のSAP BWのバージョンが知りたい方は、こちらのブログ記事をご覧ください。

また、SAP BW/4HANAのバージョンは、2023年10月末時点で4つ存在します。

  • SAP BW/4HANA 1.0(メインストリームサポート期限:2021年12月31日)
  • SAP BW/4HANA 2.0(メインストリームサポート期限:2024年12月31日)
  • SAP BW/4HANA 2021(メインストリームサポート期限:2027年12月31日)
  • SAP BW/4HANA 2023(メインストリームサポート期限:2030年12月31日)

*SAP BW/4HANA 2023の後継は、SAP BW/4HANA 2026となる予定です。
(ご参考:https://blogs.sap.com/2023/10/05/sap-bw-4hana-2023-release-update/

サポート期限を考慮すると、移行対象とすべきバージョンは、SAP BW/4HANA 2021 か SAP BW/4HANA 2023になるかと思います。

現在、SAP BWのバージョン7.5をご利用のお客様は、まだまだ猶予期間があるように思えるかもしれませんが、実はSAP BW移行対応において検討すべき事項は多数あり、計画的に対応しないと間に合わないという事態に陥る可能性があります。

SAP ECCからSAP S/4HANAへの移行対応と、SAP BWからSAP BW/4HANAへの移行対応の双方を意識した計画の整理からはじめ、そもそもERPシステムとしてSAP S/4HANAを採用すべきなのか、SAP S/4HANAを採用するとしてもインフラ環境はオンプレミスとクラウドのどちらにするのか、BI PlatformとしてSAP BW/4HANAを採用すべきなのか、SAP BW/4HANA以外のDWH製品へ移行するとしたら何にすべきなのか、といったところまで踏み込んでご検討いただければと思います。

そこで次項では、検討すべき事項について、1. 機能面 / 2. 運用面 の両面から解説します。

SAP BWからSAP BW/4HANAへの移行検討ポイントとは?

  1. まず、機能面での検討ポイントを解説します。
    SAP BWはBIプラットフォーム製品として非常に優れた機能を有しており、データウェアハウス(DWH)に必要な4大機能(データ抽出/データ蓄積/データ分析/データ配信)のすべてをカバー可能であり、その分、機能も多岐に渡ります。
    業務要件、主にデータ分析要件になりますが、利用部門が要望する複雑な要件を実現するための機能が提供されており、細やかなカスタマイズや個別のアドオン開発が可能な余地も大きいです。
    優秀なコンサルタントがシステム導入を担当していれば、どんな複雑な要件であっても要望を満たすべく、各機能を駆使して実現したシステムが構築されているものと思われます。
    ただし、これは裏を返すと、導入から年月を経て導入時に要件を提示した業務担当者や導入を担当したコンサルタントが既に離れてしまっており、現在は導入を担当したベンダーとは異なるベンダーが保守しているような状況の場合、誰にもその全貌のわからないブラックボックス化された非常に複雑なシステムと化してしまっているケースも少なくありません。
    SAP BWは多くの高度な機能を有するが故に、自社固有の要件を満たすため実装されたカスタマイズやアドオン開発について把握するには、時間を掛けて内容を整理することが必要となります。

    機能面においては、SAP BWで実現している自社固有の要件を満たすために実装されたカスタマイズやアドオン開発部分のシステム規模を正確に把握し、SAP S/4HANA移行後も本当に必要な機能は何かということを洗い出すことが検討すべき重要なポイントの一つと言えます。

  2. 次に、運用面での検討ポイントを解説します。
    長期に渡りSAP BWを運用し続けていると、業務部門の担当者達がオリジナルレポートを複製して抽出条件/表示項目/業務ロジックを一部だけ加工した“亜種レポート”を大量に作成することで、導入当初に存在していたレポートの何倍・何十倍にも及ぶ“よく似たレポート”が存在する状態になってケースを非常に多く見かけます。このような業務部門が作成した亜種レポート群は、業務担当者の異動や組織変更が発生した際、もう使わないにもかかわらず、削除されずにSAP BWのシステム上に残地されてしまう、利用されていないレポートが削除されずに登録されたままになってしまうといった状態を引き起こします。これらを整理しないと、本来は移行不要なレポートまで移行対象としてしまうという無駄なコストが発生することになります。

    運用面においては、SAP BWで利用しているレポートを対象に、システム部門は業務部門と共同で、現在は業務上利用されていない不要なレポートを事前に整理し、移行に備える計画を立てることが検討すべき重要なポイントの一つと言えます。

機能面/運用面において検討すべきポイントは多く、早め検討に着手すべきではありますが、検討に際して注意すべきポイントを次項で解説します。

SAP BWからSAP BW/4HANAへ移行検討時の注意点とは?

SAP BWでは、SAP BWのデータベース内のデータ操作に利用可能なレポートツール(フロントエンドツール)として「SAP Business Explorer(以降、BExという)」が提供されており、多くの業務ユーザーにて利用されています。
*BExは、Webブラウザで利用可能な「BEx Browser」と、Microsoft Office製品(Excel)をユーザーインターフェースに用いた「BEx Analyzer」の2つのモジュールで構成されています。

SAP BWをSAP BW/4HANAへ移行する際に最も注意すべきポイントは、業務ユーザーにとっては日常業務で利用する慣れ親しんだ機能であるBExが、後継製品であるSAP BW/4HANAではサポートされないため、他のフロントBIソリューションで代替する必要があるということです。
前項で解説した機能面/運用面での検討ポイントに「SAP BW/4HANAではBExがサポートされていない」という注意点を加味したうえで、今後のSAP S/4HANA移行計画を立案いただければと思います。

また、SAP社が提供するフロントBI製品には、SAP Analytics CloudSAP Business Objects がありますが、SAP製以外のBIソリューションも複数存在しますので、As-Is / To-Be を整理し、自社にとって最適なBIソリューションは何かというところに立ち戻り、機能面/運用面/コスト面 などを総合的に鑑みて判断いただければと思います。

まとめ

さてここまで、SAP BWの後継製品であるSAP BW/4HANAの概要や移行検討のポイントを解説して参りました。
現用のSAP BWのサポート期限を意識しつつ、今後のDWHやBIソリューションをどうすべきか、SAP S/4HANA移行時期を考慮したタイミングを見定めて、機能面/運用面も考慮しながら、移行計画を策定していきましょう。

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是非、資料ダウンロードのうえ、ご一読ください。

弊社は、SAP S/4HANA移行およびデータ分析基盤の構築において、多数の実績・事例・ノウハウを保有しております。SAP S/4HANA移行ならびにSAP BW移行でお悩みの際は、是非、弊社までお気軽にご相談ください。
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