SAP 2025年問題の解決策とは? ~DX実現のポイントも解説~(vol.29)

  • 公開日:2021.05.25

超高齢化社会に関連した社会問題や、産業経済界のDX推進に関連した課題など、「2025年」にまつわる問題・課題はいくつか挙げられます。

本ブログでは、その中でも、いわゆる「2025年の崖」といわれる課題に対してフォーカスし、仮にSAP S/4HANAで解決できる部分があるとしたら、という想定の下に、その仮説について考察していきます。 

「2025年」に関連した問題

皆様は「2025年」というワードから、どのようなことをイメージするでしょうか?
例えば、「2025年問題」といわれる、第1次ベビーブーム(1947年~1949年)に生まれた団塊の世代が2025年には後期高齢者となり、働き手が減ることによる医療・介護・社会保障の問題、もその1つかと思います。
また、他の側面では、「2025年の崖」といわれる、デジタル・トランスフォーメーションのための課題を克服できないと、2025年以降、最大年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある、とった話題に関してイメージされる方もいらっしゃるでしょう。
さらに、現時点では解消されていますが、IT業界に身を置く方々であれば、上記DXレポートにも記載のあった2025年のSAP ECC6.0のサポート切れも、過去の話題となっていたことは、記憶に新しいことかと思います。

今回は、1点目の医療・介護・社会保障に関する2025年の課題は直接ITとは関連が薄いことと、3点目の2025年のSAPサポート終了に関しては、2027年の延長により解消されていることから、2点目の「2025年の崖」に関する課題を「2025年問題」の1つと位置づけ、SAP移行・導入との関連について、考察してみたいと思います。 

SAP 2025年問題 (2025年の崖) とは?

「2025年の崖」という言葉は、経済産業省のDXレポートの中に記載されています。
内容としては、「多くの経営者がデジタル・トランスフォーメーションの必要性について理解しているが、既存システムが事業部門ごとに構築されているため全社横断的なデータ活用ができない、またシステムに過剰なカスタマイズがされていることにより、複雑化・ブラックボックス化してしまっている。
DX実現のためには上記課題の克服が必要だが、それが出来ない場合、DXが実現できないだけでなく、2025年以降、年間最大12兆円の損失が出る可能性がある。」といったものです。

このレポートの中では、IT人材不足や、各種ソフトウエアのサポート終了、アジャイル開発等についても触れられておりますが、特に大きな課題として挙げられている「データ活用」と「ブラックボックス化」に関し、SAP S/4HANAの活用との関連について、記述していきます。 

データ活用の観点

1点目は、「データ活用」の観点です。

経済産業省のレポートでは、データを活用しきれないとDXの実現が困難である、と強調されています。
そして、データ活用できない理由として既存システムが事業部門ごとに構築されており全社横断的な活用が出来ない、といった点を挙げています。
この点につきましては、SAP S/4HANAへ移行・導入し活用することで、端的に、データのリアルタイム分析が可能となると言えます。
使い古された言い回しではありますが、ERP導入によりシステムとデータの統合が可能になり、可視化が可能となる、と言われてきました。
さらにその上で、最近のSAP社は、SAP S/4HANAにより高速なHANA DBを利用し、リアルタイム分析が可能となる点を、大きなメリットであると改めて強調しています。
従来のSAP SAP ERP Central Component(以下、SAP ECC)では、肥大化した基幹データを分析用に集約し、SAP BWなどへ転送し、少し鮮度の落ちたサマリデータで分析を行う、といったイメージでした。
一方でSAP S/4HANAではデータモデルもシンプル化し、明細レベルのデータを高速なHANA DBにて分析する、という考え方を標準としています。

データ活用がうまくできない、という観点では、SAP S/4HANAの機能を用いて、活用できる環境を構築してしまう、という方法も1つではないでしょうか。 

ブラックボックス解消の観点

2点目は、ブラックボックス解消の観点です。

この点につきましては、ブラックボックス化してしまった既存システムから新規システムへ刷新することが、解決策の1つとなると思いますが、SAP S/4 HANAへ移行・導入した場合のメリットは、目先の刷新だけでなく、さらに将来的な観点で戦略的に考えることができる点が挙げられます。
具体的には、「Fit to Standard」と「Core Clean」です。

昔からERPパッケージに業務を合わせる、という考え方はありましたが、現実的には業務を合わせきれない側面がありました。
半面、最近のSAP S/4HANAの、特にクラウド版においては、アドオン開発によりシステムがブラックボックス化することを避ける意味で、業務をパッケージに合わせて短期間で稼働させる「Fit to Standard」の考え方が強くなっており、この目的に適していると思います。
また、パッケージ導入ではどうしてもアドオン開発せざるを得ないケースも出てくると思いますが、その場合はコアとなる機能には手を入れず、周辺にプログラム開発する、「Core Clean」をSAP社は推奨しています。
もともとは、バージョンアップ時の手戻りを最低限に抑えるために配慮したものでしたが、SAP S/4HANAでは、旧来型のABAP言語を用いた開発のほかに、Business Technology Platform を用いることで、JAVAなどの汎用言語を用いた機能追加も可能となっています。
保守要員の確保の観点でも、パッケージの特殊言語でなく、汎用言語を用いることで対応要員もアサインしやすく、かつブラックボックスを避ける、というメリットにもなるかと思われます。

ブラックボックス化に関しても、SAP S/4HANAの活用が将来を見据えた解決策の1つとなり得るはずです。 

SAP 2025年問題 まとめ

2025年に関連した課題の1つである、「2025年の崖」とSAP S/4HANAを用いた対応策を考察してきました。
この課題は日本国内の官民挙げて対策を練る必要があるものであり、1つのパッケージで解決策が示せるものではありません。
しかしながら、お客様が既存システムの課題を抱えながら、なかなか次期システムの構想が描けない状況もあるかと思います。
そのような場合に、DXを支える基盤として豊富な機能を持ち、パッケージとして目にみえる、体感できるものがあるSAP S/4HANAを活用して、将来のシステム構想を短時間で検討し、デジタル社会の勝者となるべく、ビジネスモデルの変革を目指していくことも、検討方法の1つではないでしょうか。

SAPパートナーである弊社としましては、お客様のDX推進のサポートが可能ですので、SAP S/4HANAへの移行・導入を一緒にお手伝いさせていただきたいと考えております。

SAP S/4HANA移行トータル支援サービス:https://erp.dentsusoken.com/solution/sap-s4hana-assessment

参考文献:経済産業省 DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服と本格的な展開~